写真・文/植田正恵

73.フルーツ出来すぎ
月刊アクアネット2009年6月号

 

 3月に福島を旅したおり、立ち寄った先でお土産にリンゴをもらった。
 福島といえばフルーツの栽培が盛んな土地。線路沿いや道路沿いに、リンゴや桃の畑が広がっていた。花が咲く頃や実りの頃は、そんな果物畑を見るだけでも楽しそうだ。

 旅を終えて我が家に帰ってきたら、シークヮーサーの花が咲いていて、あたりにいい匂いが漂っていた。そして今はアセロラとパッションフルーツの花が咲き誇っている。亜熱帯の沖縄も、もちろんフルーツ王国なのだ。

 引っ越してきたばかりの頃、島バナナを庭に植えた。
島バナナは普通に市販されている外国産バナナよりも一本一本は小ぶりだけれど、野性味溢れる酸味があってとてもおいしい。沖縄の市場でさえ、そのお値段は普通のバナナの倍以上する高級バナナだ。
 その島バナナ、さして世話をしたわけでもないのにこれが大成功で、このままいくとバナナ長者になれるのではないかというくらいに実ってしまい、ご近所に配ったり、ジャムにしてみたりいろいろ楽しんだものの、数年後には飽きてしまった。

 次に植えたのはパパイヤだった。
 大した目的はなく、なんだか沖縄っぽい雰囲気がいいなあ、と思っただけなんだけど、これもまた大豊作。フルーツパパイヤと呼ばれるちょっと高級な品種を植えたため、パパイヤといえば熟す前に野菜として利用することが多い島の人たちにも、「フルーツ」として大好評だった。

 島の人に苗をいただいたのがきっかけで始めたパッションフルーツは、これを我が家の軒先に植えれば、花がきれいで、実はおいしく、日陰になって夏は涼しくなるはず……
 …と一石三鳥を狙い、玄関先の庇になるようネットを張って棚を作り、早速植えてみた。
 するとこれまた期待以上に巨大化して、玄関先どころか家全体を覆ってしまう勢いで育ってしまった。かなりの収穫があったものの、ただでさえボロい我が家がまさにお化け屋敷の様相を呈するにいたり、2年で撤去しなければならなくなった。その後は反省をいかして場所を変え、今でも何代目かの苗が育っていて、花と実を楽しんでいる。

 そんなこんなで15年、ドラゴンフルーツも加わって、毎年何かしらフルーツの恩恵を受けている。それも、テレビで見た青森のリンゴ農家のご苦労が申し訳なくなるほどに、ほぼなんの手間もかからない手軽さで。

 こんなに簡単にできるのだから、あいている土地を持っている人たちはドシドシ植えればいいのに、と私などは思ってしまう。
 でもなぜか島の人たちはやろうとしない。
 フルーツがあまり好きではないのだろうか。福島なんて、果樹園の沿道をフルーツラインと呼んでアピールしていて、旅行雑誌るるぶに載っているくらいなのになぁ。「水納島産無農薬フルーツ」ってブランド化したら、往年のスイカのようにすっごい人気が出るかもしれない。
 そこまでいかずとも、ふんだんにフルーツが食べられる島、というだけで観光地としてイメージアップになると思うのだけれど…。

 と、ここまで考えてふと気がついた。かくいう私自身も、たくさん採れすぎる島バナナに飽きてしまったではないか。パパイヤも、鳥に食べられていたってあまり悔しくないし……。
 あまりに簡単にできすぎると、かえって長続きしないものなのだろうか?