写真・文/植田正恵

78.島民不在の箱物行政
月刊アクアネット2009年11月号

 

 政権交代が実現し、群馬県の八ッ場ダムをはじめ、いろいろと大きな公共事業が中止になる可能性が出てきた。
 全国的な知名度はどうなのかは知らないけれど、沖縄でも泡瀬干潟埋め立てが中止になるか否かが、現在ホットな話題になっている。

 泡瀬干潟の埋め立て事業というのは、埋立地を一大商業地にしようという計画らしい。ちなみに近年、同様の計画の下に泡瀬より少し南の中城湾を埋め立てたものの、企業誘致にはものの見事に失敗している。このうえさらに泡瀬干潟を埋め立てる理由が、土木建築業者を儲けさせるということ以外にあるのだろうか。さっぱりわからない。

 水納島は人口約50人。夏場の観光客は多いときには日に500人を超えることもあるとはいえ、島の船着場近くには、人口50名の小さな島にはそぐわない立派な連絡船待合所がそびえたっている。何年か前の北部振興策とやらで出来たものだ。
 何億円もかけて立派な建物を造ったのに、そこにお土産屋さんや、飲食店を入れてはならないという意味不明のお達しがあったかと思えば、維持管理はすずめの涙のような予算で、しかもすべて島民任せ。造った後のことは何も考えていなかったようだ。腹が立つというよりはあきれてしまった。

 この待合所ができる以前から、すぐ近くの別の場所にもともと公衆シャワートイレ室があった。これも清掃等の維持管理はすべて島民任せで、すでにかなり老朽化していた。
 だったらこの際、待合所に併設する形でシャワートイレ室も作ってしまえばいいのに、と島民誰もが思っていた。けれどそのように誰が見ても「合理的」な話が通らないのがお役所の世界のようで、シャワートイレ室に関しては、結局数年後に既存の建物を壊した跡地に、ものすごく立派なものができてしまった(実際、建物の管轄官庁は異なる)。

 その結果水納島の海岸には、軽トラックがやっとすれ違えるほどの小道をはさんで、みなさまの税金で作られたひどく立派な建物が二つそびえ立っている。沖合いから見てもはっきりわかるくらい立派な建造物なので、何もないきれいな砂浜を求めて昔から水納島に何度も訪れている観光客の方々の多くは、美しい景観が奪われたことをとても残念がっている。

 それはそれとして、その建物が島民にとってものすごく利便性の高いものであるならまだいい。しかし前述のとおりまったく島内産業を振興する役には立っていないうえに、維持管理はすべて島民。夏の忙しい時期に掃除をし、排水が詰まったと言われては駆けずり回らなければいけないのだ。
 また、本来バリアフリー設計されている待合所は、高級建材を使った長いスロープがあるのはいいけれど、そのスロープは砂浜に続いているのである。砂浜を自由に行き来できる車椅子が一般的に出回っているとでもいうのだろうか。

 そもそもこの手の建物は、誰が造ってほしくてできるのかがよく分からない。計画者がその使い勝手や維持管理のことまで考慮している気配は微塵もない。要らないものはそうやってすぐにできあがるのに、逆にビーチの美観回復のための砂移動など、島民が本当に必要としているものはいつまでたっても話が通らない。

 政権交代の波及効果で、そういったことどもが改善される日が来ることを願ってやまない今日この頃なのだけれど、どんなに必要であっても、人口50名の島の公共事業なんて、きっと真っ先にカットされるのだろうなぁ……。