写真・文/植田正恵

92.仕出しオードブル
月刊アクアネット2011年1月号

 

 沖縄ではひとたびお祝い事となると、たちまち大勢の人が集まる。
 親類縁者にとどまらず、近所中の人が集まることも多いから、昔ならそこで女性陣の奮闘による様々な料理が供されるところだ。
 それが最近では世の中すっかり便利になって、水納島にいてすら仕出しのオードブルを注文するのが普通になっている。

 オードブルというと、立食パーテイーなどで豪華に並ぶおしゃれな前菜料理の数々をイメージされるかもしれない。最近では本土でもホームパーティ用オードブルのケータリングサービスが普通にあるらしいから、けっして珍しいものではない。
 しかし沖縄でオードブルといえば、コンビニ弁当と同じくらい、誰にとっても身近な料理のひとつなのである。

 人数と予算に応じてピンからキリまであるものの、一般的に沖縄のオードブルは、仕切りがたくさんあるプラスチックの丸い大きなプレートに、様々な料理が盛られたものを指す。お弁当の拡大版みたいなもので、冷めても美味しくいただけるものを中心に、見た目も味もいろいろなものが、食べやすい形で盛られている。

 また、大小様々な宴会用に注文することが多いから、ふつうは1つだけ頼むということはなく、それなりにまとまった注文になる。
 そのためそれほど人口が多いわけではない本部町内でも、割烹、食堂、弁当屋、スーパーなど何軒もの業者が狭い範囲でしのぎを削っている。競争が激しいからそれなりに内容も充実していて、水納島の宴席の際によく注文する1皿5〜6人前用3千円くらいのものなどは、品数も味もそれなりに充実しているものが多い。

 宴席の日のタイミングを見計らって、なおかつ買い漏らしがないように買い物をして、連絡船への積み下ろしのために重たい食材を運び、そして自分たちでひたすら料理をしなければならないことを考えたら、電話一本で事足りてしまうオードブルの注文は断然楽に決まっている。
 それゆえ最近では、お盆お彼岸などなどご先祖様向けにも、オードブルを取ろうか、ということになってきているのだった。

 ところが楽で美味しいオードブルも、実は水納島ならではの問題がある。どこの店を選ぶか、ということが大問題なのだ。
 なにしろ狭い社会のこと、観光産業が主な水納班主催の宴席ともなれば、オードブルを作っている各業者さんとの関係が何かしらあるので、今回はこことあそこで半分ずつ、次回はあそこで、というように妙な気遣いをもって注文しなければならないのだ。
 そのうえ「このたびオードブルも始めました♪」なんて馴染みの業者から新たにヨロシクされちゃうと、悩みはさらに増えていくことになる。

 そういうわけで、「ここが一番オイシイ!!」と誰もが認める店であっても、それは宴席3回に1回くらいの割になってしまうのだった。

 近頃は業者が増えて様々なオードブルを食す機会が増え、みんなの目も舌も肥えてきたからか、宴席でオードブル談義に花が咲くようになってきた。しょせんオードブル、どこも同じと高をくくっていた私も、最近では好きなお店のオードブルが置かれてある席を選んでちゃっかり座っているくらいだ。

 たかがオードブル、されどオードブル。
 沖縄での重要な食文化のひとつであることは間違いないのである。