写真・文/植田正恵 |
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94.持込OKのおもてなし 月刊アクアネット2011年3月号 |
昨年石垣島に旅行したときのこと。 昼食とはいえこれは飲まずにはいられない。
今年もまた石垣にいく機会があったので、私はリベンジの決意を胸に件の店を再訪した。 おかげで美味しい牛汁そばとシアワセのビールで大満足しつつお会計をお願いすると、そこには当然のように、ビールの持ち込み料は含まれてはいなかった…。 水納島は県民にとっても行楽地なので、シーズン中の週末の民宿には県内団体客も多い。 民宿にはもちろんビールをはじめとする販売用の酒類を置いているのに、あらかじめ断るわけでも持ち込み料を払うわけでもなく、さも当然のように持ち込むのだ。 「飲みながら焼いたらいいさあ」 とお客様からビールの差し入れがあったりもした(もちろん遠慮なくいただいた)。 パーラーでも同様だ。シーズン中に我々がダイビング後のんびり過ごしているゲストとともに夕暮れ時の「生ビールタイム」をしているときも、普通につまみを持ち込んでいる。 このへんのところ、民宿さんやパーラーの人はどう考えているのかそれとなく聞いてみたことがある。すると 「あれはないのか、これはないのか、とないものをあれこれ注文されるよりも、持ち込んでくれたほうが気を使わなくてすむし、あるものをサービスで出すほうが楽」 ということらしい。 人間味を失った合理化・効率化の果ての社会と、多くの無駄や不利益を抱えつつも人間味溢れる社会と、いったいどちらが人にとってシアワセなのかという答えは、沖縄に限らず、もうあちこちで出始めているような気がするこのごろなのだった。 |