エビカニ倶楽部

アミメサンゴガニ

甲幅 15mm

 サンゴガニの仲間は生きたサンゴにしか住めないので、サンゴがなければそこにサンゴガニの姿はない。

 そのうえ彼らは種ごとにある程度住居にするサンゴのグループが決まっていて、このアミメサンゴガニはハナヤサイサンゴ類でしか見たことがない。

 オオアカホシサンゴガニがヘラジカハナヤサイサンゴでしか観られないというのは、体のサイズからくる制限があるのだろうと推測できるものの、ではアミメサンゴガニがハナヤサイサンゴ類ばかりで、ミドリイシ類やその他の枝サンゴで観られないのはどういう仕組みが働いているのだろう?

 このサンゴじゃなきゃ生きていけないの私…的な話なのか、それともアミメサンゴガニにとって大好きな環境が、たまたまそのサンゴが好む環境と同じだからなのか。

 ちなみにアミメサンゴガニが観られるサンゴの代表選手であるイボハダハナヤサイサンゴは、大潮の干潮時には完全に空気中にさらされることもあるくらいに浅いところにも生息している。

 一説にはこのサンゴにとってときどき空気中にさらされるのは必要なことという話もあるものの、ではそこに暮らすサンゴガニにとってはどうなのだろう?(干出した状態のサンゴにいるところを実際に観たことはない)

 また当然ながらそういうところはひとたび海が荒れると波当たりが激しく、カニたちにとっても過酷ではないかとさえ思える環境だ。

 過酷だからライバルも外敵も少ない、という利点こそが最も大事なポイントなのだろうか。

 ところが、サンゴガニ類の場合は、ときとしてこういうケースもある。

 妙な形に生育しているこのハナヤサイサンゴの仲間は、実はボート係留用の水中ブイのロープをグルリと取り囲みながら成長しているもの。

 幼生時代には浮遊生活を送っているサンゴ類は、さあそろそろ定着しよう…という頃にブイ本体やロープに到着することもあり、そこでもフツーに成長するからこのような形に育つ。

 同じく幼生時代に浮遊しているサンゴガニたちも、たどり着いた先がこういうサンゴ…ということもあるのだ。

 枝間さえあればサンゴガニたちが暮らす分にはモンダイないのかもしれないけれど、なにしろブイのロープだから、波に応じて上下することもあれば、ブイが回転するのに応じてクルクルとロープが回ることもある。

 そこで暮らすものにとっては、24時間遊園地状態だ。

 そんなサンゴであっても、アミメサンゴガニは立派に大きく成長している(↓実際の天地は逆向きです)。

 もう1種別のサンゴガニの仲間(カバイロサンゴガニ?)のチビもここで暮らしているようだ。

 これがリーフ上であれば、それぞれの好みに合わせてサンゴからサンゴへ渡り歩けるのだろうけれど、こういうところとなると到着したが最後、終の棲家確定ということになるのだろう。

 ヘタをするとパートナーに一生会えないまま終わるかもしれず、そうなるとこの別種同士で禁断の恋が…

 < それはない。

 ブイのロープについたサンゴはいささか例外で、水納島の場合アミメサンゴガニはリーフエッジからリーフ上にかけての、かなり浅いところに生息するハナヤサイサンゴ類をチェックしていれば出会うことができる。

 ただしサンゴの枝間は狭いので、たとえその奥に彼らがいたとしても…

 チラ…としか見えないことも多い。

 それでもたまにはいいところに居てくれることもあって…

 …両のハサミ脚を勇ましく広げてポーズを決めてくれることもある。

 そしてそのお腹をつぶさに観れば…

 アミメのタマタマ~♪

 過酷そうな環境とはいえちゃんと卵を抱えてケアしているのだから、それはそれでアミメサンゴガニにとっては楽しい我が家なのだろう。