


体長 10mm
水納島のような白い砂底の海中は砂が光を反射するために、同じ水深でも伊豆あたりの海と比べるととても明るい。
そのため陰日性の刺胞動物はそれほど多くはないのだけれど、水深が増すとさすがに照度は低くなり、30m超の深場となると、もっと明るい浅場では観られないようなトサカやウミエラといった刺胞動物が増えてくる。
エビカニ好きとしては、そういうトサカやウミエラサーチは欠かせない。
まだ水温が低いこの4月(2026年)にもサーチしてみたところ、思いがけない出会いがあった。

流れがないために萎びてクタッ…となっているトサカについていたのは…

…図鑑でしか見たことがなかった、エボシカクレエビ属の1種なのだった。
頭の先から尾の先までせいぜい1cmくらいながらも、なかなか戦闘的なポーズを取っているその姿はやけにかっこいい。
クラシカルアイだと肉眼ではまず見えないハサミ脚は、こんな感じ。

左右で大きさが異なっている。
そしてすでにお気づきのように、そのお腹には…

タマタマ~ッ♪
私にとって人生初遭遇=レアもののエビちゃんだけど、こうして卵を抱えているってことは、どこかでパートナーと出会っているってことなのだから、探せば他にもいるのだろうなぁ…。
このエビにはまだ和名が無いために、エビバイブル的図鑑に掲載されている「エボシカクレエビ属の1種」という名が、ギョーカイの通り名になっているようだ。
でもその図鑑が刊行されたのは2013年のことだから、とっくの昔に和名がついて…
…はいなかった。
ちなみに、しゃちほこポーズが様になるエボシちゃんながら、ずっとそのままだと腰が疲れるのか、まっすぐ伸ばすこともあるらしい。

ポーズのバリエーションもさることながら、件の図鑑によるとこのような半透明タイプだけではなく、赤い模様が入っているタイプもいるようだ。
それは宿主となる刺胞動物の違いによるものらしいけれど、どういう宿主だったら赤い模様がついているのだろう?
いずれにしろ、白い砂底環境の水納島では、半透明の白タイプばかりなのかな?
※追記(2026年5月)
その答えは、翌月に待っていた。
同じポイントの同じ場所あたりを散策してみても、ひと月前に見たトサカはすでに消えている…ということがよくある水納島の砂底ながら、同じではなくても別の刺胞動物と遭遇することもある。
個人的に感動の出会いを果たした翌月、同じ場所を訪れてみたところ、そこにはトサカではなくポツンとウミエラが生えていた。
淡い紫色のそのウミエラに…

まさかの赤い模様タイプが!
ボディカラーの違いは宿主が異なることによるのだろうか。
それはともかく、全身に走る赤い血管のような模様は、仮面ライダーアマゾンのよう。

このエボシアマゾンも、やはり卵を抱えていた。

前回同様、卵を抱えているってことは、きっと近くにオスがいるってことなのだろう。
でもまさかその「近く」がこのウミエラだったとは、さすがの私も…というか私だからこそ、気がつくはずはなかった。
本人は気づいていなかったものの、画像にオスらしきもう1匹の姿が写っていたのだ。

気がついていなかったのだからピンボケで当たり前のところ、どういうわけか撮った画像のなかには、メスではなくてオス(らしきもう1匹)にピントが合っているものもあった。

あいにくハサミ脚まで写っていないけれど、やはり同種ですよね?
考えてみれば、ウミエラからウミエラへ気軽に気安く渡り歩けるはずもないエビのこと、同じウミエラにペアで暮らしているほうがフツーなのだろう。
それにしても、図鑑を見ながら観たい観たいと思っていたエビとついに念願かなって出会えたと思ったら、翌月にはカラーバリエーション&オスにまで出会えるだなんて…。
昔からこのあたりのトサカやウミエラはちょくちょくチェックしているというのに、なんでこれまで会えなかったんだろう?
まったく同じポイントでも、今日とは違う明日がある。
だからダイビングはやめられない。