エビカニ倶楽部

フタホシコシオリエビ

甲長 7mm

 鈴生りのものを見るのが好きな私。

 その昔都内で勤めていた頃、週末に伊豆の大瀬崎へ向かう途中のみかん畑を見るのも楽しかったし、ケラマでナイトダイビングをした時に見た、一つのサンゴにナンヨウハギがウジャッと寝ている姿にも狂喜した。

 このフタホシコシオリエビも、ときに鈴生りになることがある。

 水納島の浅いところでナイトダイビングをすると、「もーいいですぅ、じゅうぶんですぅ」と、急速に語尾ですぅ化してしまうくらいウジャウジャいるのだ。

 特に海水浴エリアのユビエダハマサンゴの枝間では、まさに鈴なりに近い状態だ。

 まだビーチでちょくちょくナイトダイビングをしていた前世紀の昔には、海水浴エリアに3mほどもあるユビエダハマサンゴの群体がそこらじゅうにあった。

 ひとつの群体でもその枝間となると少なく見積もっても1000ヵ所くらいはあるはずで、その分かれ目の3ヵ所につき1匹くらいの割合で、フタホシコシオリエビがウジャウジャいた。

 つまるところそのサンゴには、都合300匹くらいのフタホシコシオリエビがいたことになる。

 夜にはそれほどウジャウジャいるのに、日中はほとんど見ることができないということは、明るい時間帯はきっとどこかに隠れているのだろう。

 でもサンゴの枝間の奥の奥に、300匹ものコシオリエビがひしめいているとしたら…

 …ちょっと見てみたい気もする。

 一見地味に見えるフタホシコシオリエビながら、よく見ると脚の節々は派手なカラーリングになっている。

 これは夜間仕様の色味なのだろうか、それとも昼間でもカラフル美脚なのだろうか。

 そうやってフタホシコシオリエビを当たり前のように見ることができたのはユビエダハマサンゴがあればこそ。

 ビーチエリアのユビエダハマサンゴ天国も今は昔、様々な事情で「生命の気配」が減少していく一方の現在の海水浴エリアでは、フタホシコシオリエビどころかユビエダハマサンゴの群体すら希少になってしまっている。

 そのためあれほどたくさん観てきたフタホシコシオリエビだというのに、デジイチで写真を撮るようになってからはただの1度も遭遇チャンスはなく(そもそもビーチでナイトをしなくなっているからでもあるんだけど…)、手元にあるフタホシコシオリエビの写真はすべてフィルム時代に撮ったもので、しかもなぜだかハサミ脚が片方しかないものばかり。

 フィルム写真の海に潜れば、きっと他の写真も掘り出せるはずだから、そのうちサーチしてみよう。

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