エビカニ倶楽部

Unknown2

Petrolisthes scabriculus? )

甲幅 10mm

 刺胞動物その他付着生物に寄り添って暮らすカニダマシたちは、わりと女子ウケしそうなビジュアル系の色味をしている。

 それに対し石の下や礫混じりの海底などでひっそり暮らしているタイプのカニダマシたちは、マニア以外に見向きもされない系の地味地味ジミーなものが多い。

 ところが、一昨年(2020年)に砂底で見つけたカニダマシは、なんともめでたい紅白カラーだった。

 …脱皮殻だったけど。

 これが脱皮殻であることは、虚ろになっている眼を見ればすぐにわかる。

 ただの抜け殻とはいえ、きれいに脱ぎ捨てられたそれは全身の様子を余すところなく伝えてくれていて、生前の色味もおそらく同様なのだろうと思われる。

 この色味なら種類を同定しやすいかも…。

 …という考えは甘かった。

 ありとあらゆるカニダマシを掲載している図鑑などどこにもないし、ネット上で漠然と探してみたところで似た色柄のものが見当たらない。

 似てるとは思えなかったものの、なんとなく系統的にウルマイソカニダマシという近年新種記載されたカニダマシの雰囲気が近かったので、その学名で画像検索してみたところ、 Petrolisthes scabriculus という名のカニの写真がニアピン賞くらいになってきた。

 さっそくその学名で画像検索してみたところ、台湾のサイトでその学名で掲載されていた写真がかなりビンゴ!

 生きているカニダマシの種類はわからないものがいる一方で、脱皮殻なのに種の見当がつくなんて…。

 もっとも、「Unknown」として先に紹介しているチビチビカニダマシ同様この類のカニダマシにも似たようなものが数多くいて、たかだか脱皮殻の写真1枚だけでは正確に同定できない…なんてことになるのかもしれないから、そのまま信じてしまわないようご注意ください。

 それにしてもひとくちに脱皮殻といっても、驚いたことにというか当然ながらというか、ここまで殻になるんですね。

 食事をするうえで欠かせない器官、顎脚のケバケバのところ。

 体は無事に抜けおおせても、顎脚が不備に終わってしまったらおちおち食事も満足に摂れなくなってしまうとなれば、脱皮の際は細心の注意を払いつつ、最後の最後まで気を抜かない真剣勝負に違いない。

 うっかり八兵衛だととてもじゃないけど生き残れない、Moltingの世界なのである。