エビカニ倶楽部

カザリイソギンチャクエビ

体長 15mm

 カザリイソギンチャクエビは、その昔西伊豆は大瀬崎で潜っていたときによく撮っていたから、水中写真を撮り始めたごく初期から付き合いがある古馴染みだ。

 水納島でもフツーに観ることができ、西伊豆同様サンゴイソギンチャクか、ハマクマノミが暮らしているタマイタダキイソギンチャクで観られることが多い。

 ただしイソギンチャクに住むエビは触手に隠された奥の方にいることが多いため、撮ろうにも触手が邪魔してなかなか思うように撮れず…

 …その姿を見かけるたびに「うぅぅぅぅぅぅぅぅ……」と意味不明の呻き声を発するしかないことのほうが多い。

 ところが98年のサンゴの大規模白化の際には、サンゴと同じ仕組みで生活している多くのイソギンチャクたちも白化し、全体に色が薄くなってパステルカラー調になった(そのまま死んでいくものはその後白くなり、縮むけど、災いを乗り越えたものはまた色が濃くなって復活する)。

 そのためイソギンチャクの触手に隠れて暮らしていたエビが妙に目立つようになり、これまでサンゴイソギンチャクやタマイタダキイソギンチャク以外では1度も見たことがなかったカザリイソギンチャクエビを、シライトイソギンチャクで見つけることができた。

 元気な時には乱れ髪状態になっているシライトイソギンチャクの触手が、弱っているために随分縮んでしまい、隠れているはずのエビが妙に目立っている。

 おまけにもともと濃いピンク色をしていたものが白化のために触手の穂先だけがショッキングピンクになっていたため、元のままの色柄でいるカザリイソギンチャクエビは、本来の思惑とは裏腹にすっかりビジュアル系シュリンプに。

 イソギンチャク自体は弱っているから喜んでばかりもいられない状況ではあったものの、個人的カザリイソギンチャクエビ撮影史上、最も撮りやすい状況だったといっていい。

 状況は最高でも、技術がそこについていかなかったけど…。

 この白化によって、それまでリーフ上からリーフエッジ、リーフ際といった浅いところにいたシライトイソギンチャクがかなり生命を落としてしまったため、カザリイソギンチャクエビはその後従来同様サンゴイソギンチャク(ウスカワイソギンチャク)やタマイタダキイソギンチャク専属に戻ってしまった。

 それでも私も前世紀に比べれば多少は撮れるようになってきたので、「ううぅぅぅ…」と唸らずに済むようにはなっている。

 ひょっとしてこれは、石の上にも30年、年季が入ってイソギンチャクの触手の動きを読めるくらいに私の性能が革新されたからだろうか?

 < 違うと思います。