エビカニ倶楽部

ケブカイボガザミ

甲幅 40mm

 夜行性のエビやカニたちは、夜になるとワラワラ…と外に出てくるけれど、昼間は暗がりや砂の下でひっそりと過ごしている。

 そのため日中のダイビングで出会うことは稀で、個体数的には特段「珍」な種類ではなくとも、出会う機会ということでは個人的に「レア」なものが多い。

 ケブカイボガザミ(と思われるカニ)もそのひとつで、まだフィルムで写真を撮っていた頃のナイトダイビングで1度出会ったきりだ。

 今に比べると当時は遥かにナイトダイビングをする機会が多かったのだけど、それでも1度だけしか会っていないってことは、実はホントにレアなんだろうか。

 どうやらそれは、ケブカイボガザミが好む環境のモンダイのようだ。

 図鑑の説明によると、「内湾の砂底や砂泥底に生息」とある。

 ビーチでさえまだ潮通しのいい砂底だった当時のこと、リーフの外となればケブカイボガザミが暮らすには不適だったために、出会う機会がなかったのかもしれない。

 冒頭の写真は、リーフの外で夜潜っていたとき、砂の上でジッとしていたところを撮ったものだ。

 考えてみるとその頃くらいから、島を取り巻く水の具合いが著しく低下し始めたような気がする。

 それまで水納島の周囲はどこでも水はクリアで潮通しがよく、砂底にはあくまでも「砂」しか無かったものが、海中に泥成分が増えるとともに透明度がガクンと落ち、場所によっては砂泥底っぽくなってきたのだ。

 沖縄サミットバブルに沸いた、2000年を境にしているような気もする…。

 このカニと初めて出会えたのはつまり、それ以前に比べてこのカニが暮らせるような環境になったから…ということなのだとしたら、人生初遭遇を単純に喜んでばかりもいられない。

 …と、ただでさえ地味なのに不気味な指標のような登場をしてしまったケブカイボガザミ、よく観れば横に張り出したツノがカッコよく、堂々と後方に伸ばしたヒレ脚なんて、得意満面のポーズのようにも見える。

 夜はこんなに堂々としているのに、日中は砂の下に潜んでいるのだ。

 その潜む砂に泥が含まれているのがちょうどいいってことなのかな?