エビカニ倶楽部

クビナガアケウス

甲幅 5mm

 前世紀の図鑑ではこのクビナガアケウスはクモガニの仲間ということになっていたのだけれど、その後分類学的研究が進み、今世紀の初頭にはなんとも驚いたことにヒシガニの仲間というところに落ち着いた。

 このクビナガアケウスとメンコヒシガニが同じグループのカニ??

 と思ったら、メンコヒシガニは「メンコヒシガニ科」という別グループだった…。

 それはともかく、クモガニ科だからこそ「アケウス」なのだろうに、ヒシガニの仲間になってもなお「アケウス」という名のままでいいのだろうか、クビナガアケウス…。

 そのうち和名まで変わっちゃうかもしれない?

 所属するグループは変わろうとも、クビナガアケウスの「首」が長いことに変わりはない。

 もちろんのことカニに「首」などもともと無いのだけれど、白矢印の部分を「首」と言わずになんと呼ぶ。

 こりゃたしかに「首長」だ。

 長いのは首だけではなく、「額」と呼ばれるツノ部分(赤矢印)もやたらと長く、やけに戦闘的なトゲがたくさんついていて、クビナガアケウス、なにげに静かにカッコイイ。

 フォルムはこのようにメカニカルな機能美を有しているように見えるのに、彼らの動きには見た目のシャープさがまったくない。

 久しぶりに長距離を走ったりして超絶筋肉痛になったあとのぎこちない動きを「C-3POのよう…」と例えたのも今は昔、現代社会では現実世界の「ロボット」が高性能になりすぎて、ロボットをぎこちない動きの形容詞にできなくなってしまっている。

 クビナガアケウスの動きは、そんな懐かしい昔のロボットを思い出させるのだ。

 動かなければ戦闘的なフォルムのこのカニがひとたび動くと、まるで性能が悪いうえに各関節の油が足りない昔の(?)ロボットのような動きになる。

 1動作ごとに体を止めるその動きは、耳を澄ませば「ギーコギーコ」という音まで聞こえてきそうなほどだ。

 ロボットが高性能になってしまった以上、これからは性能の悪そうな動きを「クビナガアケウスのよう…」と言わねばなるまい…

 …って、一般社会じゃまったく通じないか。