エビカニ倶楽部

クラゲエビ

体長 20mm

 まず真っ先にお詫びしておかねばならない。

 エビカニ倶楽部を今回一念発起してリニューアルするまでの長い間、↓この写真を…

 アカスジカクレエビとして紹介しておりました(汗)。

 今のように情報が溢れている世の中ならともかく、まだ変態社会事始めくらいの頃に、エビの正体が知りたくて藁にも縋る思いでようやく当該ページにたどり着き、ああなるほどアカスジカクレエビだったか…とガッテンしてしまった方々がいらっしゃいましたら、謹んでお詫び申し上げます…。

 そもそもこのエビの存在が、「アカスジカクレエビにはハサミ脚が短いものもいる」という勘違いを私にもたらしたのだった。

 長い間アカスジカクレエビだと信じていたこのエビは、その名をクラゲエビという。

 むろんのこと、「サンゴ礁のエビハンドブック」以前の手元の図鑑には、その名の欠片も見当たらない。

 ただしもちろんながらアカデミック変態社会では周知のエビで、そもそも新種として学名が記載されたのは1914年のことというから、例によって西欧アカデミズム文化の先進変態ぶりがうかがえる。

 アカスジカクレエビの特徴としてよく挙げられるもののひとつに、腰(?)のあたりにある白縁つき赤点がある。

アカスジカクレエビ

 しかし困ったことにクラゲエビにも、あまり主張はしていないサイズながらも同じ場所に似たような点があるのだ(ほとんど目立たないものもいます)。

 この赤点をアカスジ印にしてしまうと、私のようなマチガイのもとになる。

 シロウト目に見てクラゲエビがアカスジカクレエビと決定的に異なるのは、なんといってもそのハサミ脚の短さ。

 左右ともティラノサウルス級の小ささだ。

 また、アカスジカクレエビの赤いラインが角の先までビシッと赤いのに対し、クラゲエビの角は赤点模様。

 アナタはもうこれだけで、アカスジモエビと区別することができる。

 もちろん肉眼では絶対無理だから、写真で…。

 アカスジカクレエビと間違え続けていた写真を撮った前世紀とは違い、今や誰もが知っているクラゲエビ。

 そのエビにクラゲエビなる和名がつけられたのがいつのことなのかは不明ながら、図鑑によると和名をつける際の標本になったこのエビの宿主がクラゲだったために、「クラゲに住むエビ」ってことでクラゲエビになったんだとか。

 たしかにクラゲについていることが多いらしいんだけど、クラゲオンリーというわけではなく、刺胞動物全般ラブなエビっぽい。

 なので水納島ではヤギ類や…

 ヒドロ虫の仲間についていたり…

 刺胞動物以外のところでは、群体ボヤや…

 …カイメンについているのを見かけたことがある。

 時には砂底に直接いることも。

 けれど、クラゲについているのは観たことがない。

 ネット上の画像でも、クラゲについているクラゲエビはなかなか見当たらない。

 和名、なにげにテキトーかも…。

 ただ、ホヤについていたものは、見ているうちにプイ~ン…と泳ぎだし、ホヤから離れていったくらいだから、けっこう身軽のようではある。

 となれば、プイ~ンと遊泳中に出会ったクラゲにつく…ってこともアリなのだろう。

 クラゲで暮らしているモノたちがどうなのかは知らないけれど、ヤギ類のようにひとつの宿主に複数匹観られる場合は、冒頭の写真のように卵を抱えているメスの姿も観ることができる。

 不思議なのは、こうして卵を抱えているメスのお腹に注目すると、冒頭の写真のメスのように赤いスジだけのものがいる一方…

 赤い1本スジ以外に、3本ほどの赤い斜線が入っているものもいる。

 両者はまったく同じ年に同じヤギにいたメスで、違いといえば4月後半と5月前半という撮影日くらいのもの。

 この模様の違いはいったい何?

 またこれで種類が違うとかどうとかって話になって、また「間違ってました…」って誤らなきゃならなくなるかも?