体長 15mm
芸能人は歯が命、なんてCMがあったけど、聞くところによると髪や手、足だけのモデルとかもいて、総じてパーツモデルというそうな。
そういえば手だけしか出ないテレビコマーシャルもある。
手の場合は手タレなどと、敬称なのだか蔑称なのだかよくわからない呼称だけど、バドガールやレースクイーンとは違い、容貌の美醜に関係なく部分部分できちんと勝負できるというのも面白い。
クサイロモシオエビも、ある意味手タレかもしれない。
ミドリイシの仲間のサンゴで見かけることが多く、一見なんてことのない地味なエビなんだけど、手、つまり鋏脚の先っちょがとってもかっこいいのだ。
何でこんなに小さなエビのそんな細かい事を知っているかというと、学生時代にイヤと言うほど見たから。
スーパーフレグランスなホルマリンの香り漂う研究室で、背を丸めながら実体顕微鏡を覗きこむ作業をしていた当時、このエビの平べったくてちょっと鉤爪状のかっこいい手は、ダレていた私の良い気分転換になっていた。
他と比べて随分手がかっこいい、ということで、当時はこのエビを特別視してもいた。
その後海中で実際に出会うと、ホルマリン漬けカラーとは違って色も若草色で明るい感じだし、モシオという名も風情があってなかなかいい、なんてことになり、このエビの「お気に入り度」はどんどん上昇していった。
ところがいざ写真を撮ろうとすると、サンゴの枝の間をスルスルと移動していき、なかなか思うようにいかない。ただでさえサンゴの隙間に住んでいるやつは撮りづらいのに…。
やっと撮れた写真は、かろうじて証拠写真といった程度のボンヤリとしたもので、肝心の「手タレ」をまったく強調できないヘボへぼ写真になってしまった…というか、ホントにクサイロモシオエビなの?という感じ。
彼の実力(?)はイヤと言うほど見てきたのだから、もっとカッコイイところを…と思いつつ、その後なかなか撮れないでいるのだった。