エビカニ倶楽部

ラエビマヌス

Periclimenes laevimanus

体長 20mm

 基本的に陰日性のウミエラの仲間たちは、白砂の明るい海底の水納島では多くはなく、通常のファンダイビングの範囲内だとポツポツと小さなものが見られる程度だ。

 でももっと深いところまで足を伸ばしてみると、白い砂の海底でもさすがに照度が落ちるからだろう、ウミエラを見かける頻度が増す。

 2010年の春頃には、そんな海底に目を疑うシーンが広がっていた。

 遠目にはまるでアキアナゴの大群落に見えるほどの、ウミエラの大群落。

 深いために長居ができないのが悔しくなるほどに、ウミエラには魅惑的なスモールクリーチャーがいろいろついていたものだった。

 その前年の2009年はここまでたくさんウミエラがいたわけではないにせよ、訪れるとポツポツ砂底からわりと長めのものが生えていたから、サーチすることも多かった。

 サーチしていると、ウミエラの根元付近にエビがいた……

 …のを発見して「なんとなく」だんなが撮ったのがこのエビだ。

 ちなみに冒頭の写真は横位置にするために実際の天地が90度違っており、本当の向きは↓こうなっている。

 儚げながらもハサミ脚は長く伸び、なかなかスタイリッシュなそのフォルム。

 撮ったはいいけどだんな的には「アカスジカクレエビかなぁ…」で終わっていたこのエビ、今回改めて調べ直してみたところ、2013年刊の「サンゴ礁のエビハンドブック」にようやく新登場した Periclimenes laevimanus であろうと思われる。

 図鑑の解説によると、ウミエラにつくタイプは透明で、この写真のエビのような赤線があるものはハネガヤ類につく、とあるけれど、世の中そうそう図鑑の解説どおりにいくものではない。

 特筆すべきは、このエビがベトナムで発見されて新種記載されたのは2010年のことだそうで、図鑑刊行時の日本では沖縄本島でのみ確認されていたということ。

 つまり、だんながこのエビを撮った2009年にサンプルがアカデミズム方面の手に渡っていれば、minnaensis という種小名になっていたかもしれないのである。

 あー、惜しいことをした!

 …といいつつ、その際写真を見せてもらった私も、当時ピクリとも反応できなかったのはいうまでもない。