エビカニ倶楽部

ミナミイワガニ

(オオイワガニ?)

甲幅 40mm

 イボショウジンガニの稿で触れたとおり、長らく混同していたミナミイワガニ。

 といいつつ引き続き「混同」しているものと思われる。

 というのも、ミナミイワガニとそっくりなオオイワガニという種類もいて、どちらも似たようなところに住んでいるうえに私ごときシロウトには区別しづらいために、撮った画像を見てどちらと判別できないのだ。

 なのでとりあえずここではオオイワガニも混じっているかもしれないことを踏まえつつ、ミナミイワガニで通すことにする。

 水納島でミナミイワガニに出会うのは簡単だ。

 日陰側の桟橋を見下ろせば、岸壁に張り付いている姿を見ることができる。

 張り付いているからといって、ボーッとしているわけではないから、人の気配を察知するとすぐさまダッシュで逃げ去る。

 切迫した危機の場合は、そのままドボン!と海に飛び込む機敏さも見せるミナミイワガニ。

 潮間帯のギリギリ水がないあたりが彼らの暮らしの場らしく、桟橋の岸壁は潮の干満に合わせて上下するだけで好みの場所に居られるから、彼らにとって便利な場所のようだ。

 また、桟橋周辺には釣り客が残した残骸があったりするので、ご馳走にありつけることもある。

 一方、波が当たる岩場にいるものは、なかなかハードな暮らしをしている。

 ↑このように水面よりもちょい上あたりでエサを探している際に…

 …ザザーッと波をかぶることもある。

 それでもけっして波に呑まれてしまうことはなく、4対の脚でしっかり岩をホールドしているミナミイワガニ。

 さすが波打ち際のカニさん。

 桟橋で見られるものと色味が随分異なっているのは、普段食べているエサの違いによるものなのだろうか(ミナミイワガニとオオイワガニでは、甲羅の形の差異が述べられてはいても、色味の違いには言及されないから種類が違うからというわけではなさそう)。

 ある年の梅雨時には、この赤味の強いタイプが桟橋の上にいたこともある。

 水分が多いと、陸上での彼らの行動範囲は俄然広くなるのだろうか。

 左右の脚の先から先まで20cmくらいあるカニが、連絡船から降りた途端目の前にいたら、さぞかしびっくりするだろうなぁ…。

 潮が引いた波打ち際を散歩していると、岩の窪みなどに海水が溜まっているところで、ミナミイワガニがのんびりしていることもある。

 ホントは空気中にいたところ、私の気配を察知して水中に没したのだろうか。

 ミナミイワガニとオオイワガニとでは、上から見た甲羅の形が違っているそうだから、わかるヒトにはこの写真だけですぐにわかるのだろう。

 どちらか区別するのは我々シロウトには至難のワザながら、色味はともかく甲羅にこの模様があれば、ミナミイワガニかオオイワガニのどちらか、と思って間違いないはず。

 特に甲殻類変態社会人というわけでもないかぎり、一般的にはスルーされていることのほうが多いミナミイワガニではあるけれど、生き物が好きな子供たちの目を奪うこと必至でもある。

 なので、「このカニは何ガニ?」とお子様に尋ねられたおとーさんおかーさんは、すかさず「ミナミイワガニ」と答えられるようにしておかねばならない。

 そう答えた途端、「違うよ、オオイワガニだよ!」とお子様に訂正されても、当サイトは責任を負いかねます。