エビカニ倶楽部

オメカシヒナヤドカリ

甲長 10mm

 小さな生き物にも興味があって、なおかつエビカニが大好きな私だから、珍しい種類かどうかを問わなければ、小さなヤドカリさんと遭遇する機会も多い。

 ただしそういった小さなヤドカリさんたち、とりわけホンヤドカリ科の小さい子たちは似たような色味のものが多く、図鑑をパラパラとめくってすぐに正体が判明することなどかつては滅多になかったこともあり、「おっ!」と思って撮ってはみても、撮りっぱなしでその後名前を調べる努力を怠っているものが多かったりする。

 ところが一念発起して調べてみると、このヤドカリのようになんとも可愛げな名前がついていたりする。

 その名もオメカシヒナヤドカリ。

 こういった名前が判明するだけでも隔世の感ありってところか。

 よく見れば、その名のとおり眼や体の随所におめかしを施したカラーリングで、特に小さな黒目(?)の周りにある細かな赤点が印象深い。

 この眼の特徴だけで随分対象を絞ることができ、そのうえ第1触角が赤紫色であれば、もうオメカシちゃんと思ってまず間違いない。

 そんなオメカシヒナヤドカリとは、これまで3個体と出会っている。

 いずれも水深20m前後のわりと深い砂底の根でのことで、しかもファーストコンタクトは、ニクイロクダヤギの枝上だった。

 こういうところにいてくれるとなんであれ撮りたくなるところへもってきて、ファインダーを覗いた時点で可愛げなおめかし模様の存在がわかったので、「おっ!」とばかりに撮ったものだった。

 その翌年には、まったく別の場所のニクイロクダヤギの枝上にいた。

 オメカシちゃん、こういったクダヤギ系が好きなのだろうか?

 と思いきや、昨夏(2022年)は水深17mほどの砂底にある根の岩肌にいた。

 図鑑的な説明では日中は暗がりを好むようなことが書かれているけれど、水深17mほどの白い砂底の根は相当明るいにもかかわらず、サンゴが育っているような場所でウロウロしていたくらいだから、明るくてもモンダイないのかもしれない。

 ところで、これまで出会ったオメカシちゃんはみんな、奇しくも背景がオレンジだったり貝殻がオレンジだったりするため、オメカシちゃん本来の体の模様の色がわかりづらいんだけど、脚の小さな点~短い線になっている模様はおおむね赤っぽい。

 聞くところによるとこの赤い模様は、透明な体の中にある色素胞なのだそうで、オメカシヒナヤドカリは興奮度会いに応じて色素胞を収縮させるため、同じ個体でも赤味が違って見えるという。

 ↑この時はカメラを向けられておまけにストロボをビカビカ浴びせられているわけだからビビっているのは間違いなく、おそらく色素胞は縮んでいるのだろう。

 リラックスしているときだとどれくらい違うんだろう?

 次回遭遇時は、ビフォーアフターを意識して観てみようっと。