Maybe・13
瀬底大橋

 瀬底大橋は、水納島のお隣にある瀬底島と本島とを結ぶ橋だ。大橋というほどとりたてて長いわけではないけれど、この橋によって瀬底島は離島ではなくなった。

 小さな島が本島と陸続きになるということがいったいどれほどのことかというのは、一度でもその島に暮らしてみないと絶対に肌で感じることはできない。瀬底島と本島を隔てる海はたった数百メートルとはいえ、それまで海で隔てられた土地に暮らしていた人々からすれば、橋ができた後の暮らしの変化は、明治後の文明開化どころではない。

 この瀬底大橋が完成したのは1985年のこと。
 僕が琉球大学海洋学科に入学したのが1986年である。
 ご存知のとおり瀬底島には研究センターがあって(正式名称を忘れた)、当時は琉球大学の付属施設だったそのセンターで、海洋学科は1年生と2年生にそれぞれ実習を義務づけていた。
 まぁ実習といっても特に1年生のときは遊びみたいなもので、泳いで潜って海辺で遊び、3度の飯はついているという、実におおらかな講義だった。

 ただし僕たちが入学する前年までとそれ以後とでは、まったく事情が異なっていた。
 橋が架かったからだ。
 いかに遊びのような実習とはいえ、ひとたび離島に渡ってしまえば缶詰状態になっていた先輩たちと違い、我々の場合はいつでも島から出ることができた。もちろん日中に抜け出すことなどできなかったものの、夜はやりたい放題である。
 おかげで、前代未聞の「学生たち夜間所在不明事件」が起こったのだった。みんな車で本島までドライブに行ってしまったのだ。ハイ、ワタクシもその一員でございました……。

 ことほどさように、橋の有無というのは大小にかかわらず、離島の生活をガラリと一変させるのである。<それってちょっと違う話じゃ……?

 そんな話も今は昔。
 今や瀬底島といえば本島と地続きの島として多くの観光客が知るところとなっている。橋のせいで「離島」としての付加価値が減退しているとはいえ、本島とは一味違う「鄙」を手軽に味わうことができるという点では、やはり貴重なドライブコースであろう。

 その瀬底島へ渡る際に必ず通るのがこの瀬底大橋だ。
 ここからの眺めがけっこう素敵なのである。
 アーチ状になっているために橋の頂はけっこうな標高で、眼下の海はあくまでも妙なるエメラルド色をたたえ、遙か沖合いには伊江島が、そして瀬底島のリーフも麗しき自然の造形を惜しげもなく見せつけてくれる。
 ふりかえれば本部の山並みや街並みが、亜熱帯の日差しを浴びて色鮮やかなパノラマになっているのだ。

 
瀬底島のリーフ(左)と、本部町の街並み(右)。
あいにくの曇天のために冴えない写真になってしまったけど、
晴れていればそれはもう、絶景かな絶景かな……のはず。

 そんな情景が見られる場所を、車でたかだか数十秒で渡りきってしまってはもったいない。ここはひとつ車を橋のふもとに停めて、自らの足で橋の頂点まで登ってみよう。
 車で通過するだけではけっして気づかない風光メイビーに出会えるはずである。

オススメ時間帯
海の色を見るなら午前中からお昼過ぎにかけての、陽が西に傾く前の時間帯がベスト。
本部の山並み街並みを見るなら午後のほうがいいかも。
つまり瀬底島でお昼を過ごすなら、行きと帰りそれぞれで眺めてみればいいってことね(笑)。