Maybe・19
公園らしき謎の広場からの眺め

 本部半島といえば水納島から目と鼻の先、近所も近所である。
 が、えてしてそういう「近所」ほど、ゆっくり時間をかけてまわれないものだ。
 お隣にある瀬底島には熱帯圏ナンチェロカンチェロという名称の研究施設があって、そこに勤務している先輩がいらっしゃるにもかかわらず、遠くて近い瀬底島、これがなかなか足を運べないでいる。

 瀬底島ですらそうだから、この稿で紹介しようとしている本部半島なんて、実のところ買い物、銀行もしくは郵便局仕事、そして食事以外に、時間をかける機会などまずないといっていい。陸続きなら、いくらでも散策するのだがなぁ…。

 ところがこのたびうちの奥さんが、シーズン終了の慰労をかねて本部にある野毛病院で健康診断を受けることになり、その間を自由に使えることにあいなった。限られた時間とはいえ、カメラを抱えて好き放題にあちこち行けるのだ。願ってもないチャンスである。

 さっそく適当に車を走らせてみた。
 風光メイビーというだけあって、とりあえず標高の高いところを目指す。すると……

 周りに何もないところに、ポッカリとできた公園らしき広場があった。険しい山を登ったわけでも、生い茂る草木を掻き分けた末にたどり着いたわけでもない。

 展望台らしきベンチつきのあずまやや、入り口付近にはバカボンパパが毎朝立ち寄っていたような水飲み場もある立派な広場である。
 普通、意図不明であれこういうちゃんとした公園を造ったら、その入り口付近にはこれまた意味不明に立派な看板があったりして、○○公園と大書されているものなのだが、どういうわけかここには名称はおろか管理者すらどこにも書かれてはいなかった。

 この公園に達する小さな坂道の麓は、工事現場らしく赤土が大々的に剥き出しにされていて、周囲には人家すらまばらにしかない。こんな場所に、いったい誰がこのような立派な広場を必要としたのだろうか。しかし広場の草はちゃんと定期的に刈られているようだし、ベンチその他もいたって綺麗だ。

 ともかく広場に入り、あずまやを目指してみると……

 なんと!

 そのあずまやから眺めた景色が、上の写真だったのである。
 伊江タッチューを正面に、右手には海洋博公園、そして広がる海原。おあつらえ向きにハトの群れまで。
 まさに風光メイビー!!

 あずまやのテーブルでお弁当を食べたらさぞかし心地よかろう。
 こりゃさっそくみなさんに紹介しなければ。

 …と思いはしたものの、名前がない。なんと言って場所を特定すればいいのだ。

 その答えは、ひとしきり写真を撮って別の下り道に入った途端に判明した。
 ここは、モトブヒルズリゾートという、勝ち組隠退者用宅地造成地なのだった。

 このご時勢である、ここを宅地造成して一儲けしようと企んだ不動産屋が現在どうなっているのか知る由もないけれど、とりあえず展望台を…ってことで見晴らしのいいところに適当に造ったのだろうか。

 ともかくこの展望台からの眺めは抜群なので、広場が丈高い雑草に覆われてしまう前に、今のうちに堪能されることをオススメする。

オススメ時間帯
午前中に行ったら巡光になるので、海の色はやはり綺麗だった。
夕方再訪してみると、今度は西日を受けた山々や本部の町がそれなりに美しかった。
西であれ東であれ、太陽が低い位置にあるときのほうがいいのかもしれない。