其之三十
種類を問わなければいつでもどこでも出会えるヒトデたちの中には、どういうわけだか脚の一部がボコンと膨れているものがいる。
はて、なんじゃこりゃ?
…と、うっかりヒトデを引っくり返してみると、奇妙なモノを目にすることになる。
ヒトデの脚からドリルが突き出ている!
…とはさすがに誰も思わないだろうけど…
巻貝がヒトデに喰われている??
…と思った方は、ヒトデの口ってこんなとこにあるんだ、と誤解されるかもしれない。
しかしこの場合、利を得ているのはヒトデではなく貝のほう。
そう、これは貝がヒトデに寄生しているのだ。
ヒトデへのめり込み加減は、貝のサイズや侵入段階でいろいろある。
このようにヒトデの体内に侵入し、ヒトデの腕に抱かれながら(?)安穏と栄養を吸い取っているそうな。
このような貝たちはヒトデヤドリニナと呼ばれるグループの貝たちで、写真のアカモンヒトデに埋もれているのは、カタハリヤドリニナという種類のようだ。
面白いことにヒトデやナマコ、ウミシダといった棘皮動物に寄生するこのテの貝は、種ごとに寄生する種類も決まっているそうで、このカタハリヤドリニナはアカモンヒトデ専属なのだとか。
それにしても、寄生というにはコイツはやけに貝がでっかすぎると思ったら、このヒトデと貝の組み合わせの場合はこういうサイズ比がフツーらしい。
自分の体でこんなことが起こっていたりしたらゾッとするところだけど、貝殻に体を半分埋められ、腕の中で栄養を吸い取られ続けるヒトデの暮らしって、いったいどういうキモチなんだろう?
脚の1本くらいどーってことないんじゃね?てなもんなんだろうか…。