海のなんじゃこりゃ?

其之九

海底噴火

 ご存知のとおり水納島の海は砂地のポイントが多い。

 砂地には根と呼ばれる岩が大小いくつも点在していて、そこが砂漠のオアシスのように、魚たちが群れ集う場所となっている。

 自然、ダイバーはそういった根を巡ることになる。

 ところが、なかにはその途中の、一望砂だけの世界をじっくり徘徊する人もいる。

 変態社会にお住いの人々だ。

 そんな方がきっと目にするであろう不思議なものの一つが、冒頭の写真のようなシーン。

 まるで火山が噴煙を噴き上げるかのごとき勢いで、砂中から砂を噴出するのだ。

 「まるで火山」とはいっても、噴出された砂で形成されているのであろう山は子供の頃によくやった棒倒し遊びの砂山ほどで、その頂点あたりから舞い上がっている砂煙の高さは10cmくらいのものではある。

 初めてこの砂の噴出を見たときは、海底温泉でも湧き出しているのかと色めきたった。

 しかしずっと見ていると、間断なく噴出し続けるわけではなく、大地の息吹のように定期的な間隔があり、それも5~6回噴出したかと思うと休眠してしまう。

 その様子を動画で撮ろうと、噴出中の砂山に接近すると、最前まで景気よく噴出していたのに、弱々しく1度噴出した後、すっかり沈黙してしまった。

 すると、それよりも奥の山から、再び噴出が始まった。

 手前の山も同じように始まるんだろうか…

 …と待っていてもまったく気配なし。

 ならば…とばかり、さきほどから景気よく噴出している山を撮ろうと近寄ると……

 …また沈黙。

 その一連の様子が↓こちら。

 これってひょっとして、砂中からワタシの気配を感じ取っているってことなんだろうか?

 これはきっと、砂山の中にナニモノかがいるに違いない!!

 ふとあたりを見回すと、わりとたくさんこの塚があることに気づく。

 潮流がおとなしめの日々が続くと、砂底一面に小山が形成されていることもある。

 そして場合によっては、あちこちで砂が噴出しているのだ。

 はてさて、これはいったいなんじゃこりゃ?

 でも……。

 砂をほじくりかえして、バタリアン的とんでもないものが出てきてしまったらどうしよう…。触れてはならないものだったらどうしよう…。

 「取り返しのつかないことをしてしまった……」

 などと、ララァを殺したアムロのようなセリフは吐きたくない。

 そんなわけで、今に至るまでまだその正体をつきとめていない。

 それでは、世に星の数ほど出ている図鑑で調べてみるか……。

 が。

 こういう場合、困ったモンダイが。

 ひょっとすると世の中には、この生物自体がちゃんと載っているものもあるのかもしれない。でも、その生物が営んでいるこの海底噴火は紹介されず、生き物の姿だけ掲載されていても、観ているワタシにはまったく手掛かりにならないのだ。

 手元にある図鑑を見る限りでは、この砂噴出を紹介しているモノがない。

 ギボシムシのウンチを載せている図鑑にさえ載っていなかった…。

 ネット上でいろいろ調べてみた限りでは、ニホンスナモグリというシャコに似た甲殻類の巣穴にそっくりであることがわかった。

 環境がまったく違うのではたして本当にスナモグリと関係があるのかどうかはわからないけど、とりあえず本稿ではスナモグリ類に重要参考人として任意同行を求める次第である。

 誤認逮捕にならないよう、ご存知の方はテルアスプリーズ!