
28・えびローグ
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 レンタカー屋さんに空港まで送ってもらった。 来年新しい空港が開港し、立派な道路が造られるということは、この道もひょっとすると走り納めかもしれない。  JAL側だけにある土産物屋を物色したあと、とっとと保安検査場を通過した。  しばらくたって、本を読んでいるのかウトウトしているのか判別できないくらいになっていたときだった。 「ピンッ!」  と神経が音を立てて正気に返るアナウンスが聞こえた。 空港で名前をアナウンスされるなんて初体験♪ ひょっとして、ミッションをこなし終えた僕に、全日空ご指名で優先搭乗案内をしてくれるのか??  ……んなわきゃない。  はて、いったい誰だろう? 放送で呼ばれた旨、保安検査場の係の方に言ってみると、いったん出る分にはなんのモンダイもないようだった。 案内された1番カウンターに行ってみると……  あれ?人がいない。 えび屋−Mさんが!! 我々が乗る飛行機の時刻は伝えてはあったものの、出荷作業で忙しい中、お昼過ぎに空港でお別れするのは無理だよなぁと諦めていた。 でもえび屋−Mさんは義理堅く温かいヒトなので、短い期間とはいえ、こうして数日一緒に過ごした後輩を見送らない、なんて選択肢はありえなかったのだろう。 一生の中で、一度あるかないかという貴重な仕事を体験させていただき、なおかつ一生分といってもいい数々の車えび料理を堪能させていただいた我々。  えび屋−Mさん、本当にお世話になりました!! そんなえび屋−Mさんが、お昼代わりにと手渡してくださったものが。 なんと!!  あの金城かまぼこ店のジューシーかまぼこ!! 
 な……なんで私が食べたかったものが??  特に黒いほう、ブラックジューシーがツボなのだ。  彼の本当のオススメは別のかまぼこ店だそうで、あいにくそこが売り切れていたのだとか。 えび屋−Mさん重ねて御礼申し上げます!! わざわざ見送りに来ていただいただけでなく、お土産までいただいて、最後のお別れをした。 保安検査場を通るとき、新たな荷物になったお土産を機械に通しつつ、係の人にお土産をもらってきたことを告げると、 「よかったですねぇ!」  保安検査場は、空港は空港でも田舎になればなるほど、昔ながらの対面販売の市場のような空間になる。  帰路も特に問題なく、予定どおりその日のうちに島に帰還。 こんなにまでしていただいて、結局写真が使い物にならなかったらどうしよう………。 一抹の不安を抱きつつ、「優」とはいかずともせめて「可」でありますようにと祈りつつ……。 すると、さっそくえび屋−Mさんからご返事が。 「すばらしい出来だと思います。涙が出そうなくらい!」 今旅行記ではオチャラケたことばかり書きつつも、僕のプレッシャーがいかほどだったか。 このえび屋−Mさんの一言で、ワタシの方こそ涙が出そうになりました……。 おかげで、僕の肩にズッシリ乗っかっていたエビの餌5袋分にも達するほどの超重量級の「荷」が、たちまち星の彼方へと消えていったのだった。 今なら星見石から、プレアデスの近くにあるであろう僕の「荷」が見えるかもしれない。 
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