水納島の魚たち

ブチススキベラ

全長 30cm(写真は3cmほどの幼魚)

 2〜3cmほどのチビになると美しい模様になるものが多いホクトベラの仲間にあって、そのサイズになっても地味路線をヒタ走る道を選んだらしいブチススキベラのチビターレ。

 その色柄だけに煌びやかなサンゴの枝間にいることはなく、リーフ際付近の死サンゴ石がたくさん転がっている浅い海底で、石の合間や隙間にときおり身を潜ませつつ、ヒラリフラリノラリクラリと、千切れた海藻泳ぎをしている。

 地味といえばこれ以上ないくらい地味な姿ながら、能動的に漂っている(?)その動きが妙に気になる。

 気になるからじっくり観ようと近寄ると……

 …すぐに石の下に避難してしまう(写真はもう少し小さめの別の個体です)。

 でも逃げられたからといって、いつまでもそのチビチビに固執する必要はない。

 たいていの場合、周りには何匹も同じようにヒラリフラリノラリクラリしているブチススキベラのチビターレたちがいるから。

 みんながみんなこのようなブラウンさんというわけではなくて、白っぽいものもけっこう見かける。

 暮らしている場所の環境に応じて色味が変わるのだろうけど、同じ場所で白いのも茶色いのもヒラリフラリノラリクラリしているところをみると、気分のモンダイかもしれない。

 このようなチビターレたちが成長するとどうなるかというと……

 しっかりホクトベラの仲間っぽい模様になってくる。

 これで10cm弱くらいだろうから、チビターレに比べれば随分大きくなってはいるけれど、ブチススキベラはこの仲間の中では最大級で、オトナのオスは30cmくらいになるという。

 では「オス」はどのような姿をしているかというと……

 ……って、なんてことだ、ブチススキベラのオトナ(若魚かも)の写真は↑これ1枚っきゃ無い!

 背後にもう1匹写っているくらいだからけっして珍しいわけじゃないだろうに、なんで撮ってないんだろう?

 やっぱ「ベラ」だから?

 < おいちゃん、それを言っちゃあおしまいよ。 

 ウーム…ブダイ級のオスの姿も含め、追記を待て。

 追記(2021年5月)

 他の魚たち同様、水ぬるむ季節となってから、冬の間はなかなかお目にかかれなかったブチススキベラたちに会えるようになってきた。

 いまだオトナの「オス」を海中で認識してはいないものの、ゴミもしくは千切れ藻同然のチビターレからやや成長して3cmほどになっているものや…

 そこからもう少し成長して千切れ藻の趣が消えた4cmくらいの幼魚…

 そしてハッキリとブチススキベラだとわかる模様を呈している若魚…

 さらにはほぼメスであろう10cm弱の子まで。

 各段階のブチススキベラたちが、入り組んでいるリーフの入江状のところにできている転石ゾーンでポコポコ観られる。

 でも似たようなところに住む同じ仲間のホクトベラやホシススキベラに比べれば、またシーズン中に出会う幼魚の数と比較しても、若魚以上に育っている個体はかなり少ないように見受けられる。

 ホントはもっと南方の年がら年中温かな海が好きなんだろうか。

 たくさんいるホクトベラと違ってメスサイズになっているものが近くにいないからか、ブチススキベラのメスはホクトベラと行動を共にしていることもある。

 ホクトベラの幼魚の個体数が多いところでは、何食わぬ顔をしてホクトベラの幼魚たちに混じっていることも。

 砂地のポイントではリーフ際の死サンゴ石ゴロゴロゾーンに多い彼らも、環境によってはサンゴが育つゾーンで過ごしているようだ。

 とはいうえこれまで目にしたことがあるものは、かろうじてメスになったくらいのものばかり。

 では30cm超という巨大なオスは、いったいどこで観られるのだろう?

 さらなる追記を待て。

 追記(2022年12月)

 今年(2022年)の梅雨時期に、普段ちょくちょく潜る砂地のポイントのリーフ際で出会ったブチススキベラは、人生最大級だった。

 20cm超と存在感はたっぷりで、しかも2匹いたんだけど、もう一方は↓こんな感じ。

 どちらも図鑑的には「メス」の色模様ながら、ひょっとすると尾ビレに帯が入っていない方は、もうオスとして行動していたのかもしれない。

 もしくは、すぐそばに30cm超のオスがいたとか?

 はたして近い将来、30cm超のオスに遭遇する日は来るか。

 引き続き追記を待て。