水納島の魚たち

デバスズメダイ

全長 5cm

 枝サンゴに群れ集う小魚たちは、どれもこれも素敵だ。

 とりわけデバスズメダイが群れ集う姿は、トロピカル光線120パーセント。

 燦々と降り注ぐ日光が届く程度の浅いところを好むデバスズメダイなので、海水浴場でもフツーに観ることができる。

 リーフ際でもお馴染みさんで、幼魚・若魚が枝サンゴに一斉に出入りする様子は、真夏の暑いさなかに一陣の涼風を運んでくれる。

 ただしその様子を眺めようとウカツに近寄ると、デバスズメダイたちはすぐさまサンゴの隙間に隠れてしまう。

 サンゴの周りで群れ泳いでいる様子を観たければ、そのままカエルアンコウのようになってジッとしているしかない。

 ことほどさように、デバスズメダイにとって枝サンゴは、住処、隠れ家として欠かせない存在だ。

 だから98年のサンゴ白化以後は、リーフからすっかり姿を消してしまった(もともと高水温に耐性があるサンゴが多いリーフ内には健在だった)。

 その後10年近くたってようやくリーフのサンゴが回復してくると、まだまだ小ぶりな枝状ミドリイシに、デバスズメダイのチビチビたちが群れ集まるようになってきた。

 ガミラスとの戦いのあと、元の青さを取り戻した地球を観る思いだった。

 リーフのサンゴが回復して来るにつれ、デバスズメダイの数も目に見えて増えてきた。

 ただ、熱帯地方では通年繁殖シーズンなのだそうだけど、沖縄では水温が温かい期間のみ。

 そのため夏の間はかなり増殖するものの、その後補給が途絶えると、冬の間にめっきり少なくなる。

 でもそれを繰り返しているうちに、しっかり冬を越す子たちも増えてきて、その個体数は少しずつベースアップしているように見える。

 梅雨も半ばを過ぎて水温がどんどん上がってくると、デバスズメダイたちは繁殖期を迎える。

 住処・隠れ家にしているサンゴのそばにあるガレ場を産卵床に選ぶ彼らは、婚姻色を発しているオスが自らの産卵床にメスを誘い、卵を産ませる。

 オスの婚姻色には個体差がありはするものの、おおむねこんな感じだ。

 体が黄色っぽくなり、ヒレの一部が黒くなる。

 背ビレの黒くなる範囲は個体により違うのだけど、胸ビレが黒くなるのは共通のよう。

 なのでデバスズメ産卵床フィールド(?)には、このように胸ビレを黒くした興奮モードのオスが、そこかしこでやる気を見せている。

 オスがそれぞれキープしている産卵床にメスを誘う様子は健気すぎるほどに一生懸命で、誰も彼もが全精力を注いでいるのがよくわかる。

 努力の甲斐あって誘われたメスが産卵床に来てその気になると、産卵が始まる。

 …って、1匹1匹のメスにかける時間はわずか。

 産卵祭りでは、オスもメスも恋心で動いているわけではないらしい……。

 数か月ほどしかない限られた繁殖期間(沖縄の場合)の彼ら彼女たちの頑張りのおかげで、海の中に一陣の涼風がもたらされるのだから、ここはしっかりと声援を送ってあげねばならない。

 そして燃え上がる季節が終わると、一息入れるデバスズメダイなのであった。