水納島の魚たち

ギンユゴイ

20cm(写真は3〜6cmほど)

 昨秋(2021年)から始まった軽石騒ぎの初っ端には、軽石を拠り所にしていたらしきアミモンガラが波打ち際に大集合という、不幸中のヨロコビ的出来事があった。

 このチャンスを逃すまじとばかりに、シーズン終了と同時にカメラ片手にイソイソと桟橋脇の波打ち際で潜ったところ、キラリと輝く小魚の集団が波打ち際でウロウロしていた。

 ギンユゴイのチビたちだ。

 ビーチの波打ち際あたりではお馴染みの魚で、膝下くらいの浅いところで右往左往しているのをよく見かける。

 ただ、ホントに右往左往して落ち着きがないため、これまで近くから撮らせてもらったことが無かった。

 ところがアミモンガラ目的で潜っていた時は、降って湧いた軽石に彼らも浮足立っていたのか、桟橋の付け根付近からほとんど離れずにいてくれた(そのため背景がコンクリート…)。

 ギンユゴイはキラリと光ってはいるけれど、体は鱗に覆われている。

 特徴的な尾ビレの模様は、熱帯魚でお馴染みのネオンテトラの仲間であるシザーステールカラシンという3cmほどの魚に似ていて、初めてギンユゴイを知った日から、ワタシにとってこの魚は海のシザーステールという存在になっている。

 ただ、彼らはオトナになっても水面付近が住処らしく、波あたりの強いところを好むこともあってか、昔から知っている魚のわりには、20cmを越すというオトナたちとはほとんど縁が無い…というか、水納島ではオトナを見た記憶がない。

 そのかわり、チビターレには会う機会がある。

 潮が引けばタイドプールになるくらいに浅いところで、ボラのチビチビと一緒に暮らしているチビターレたちがいた。

 3cmにも満たないから、まさにシザーステールカラシンだ。

 ところで、ギンユゴイというのは銀ユゴイということなんだろうけど、そもそもユゴイって誰?

 …とおぼろげに不思議に思っていたところ、馴染みがないのも当たり前、ユゴイは汽水域から淡水に生息するほぼほぼ淡水魚といってもいい魚たちなのだ(沖縄の河川にいるらしい)。

 日本で知られている4種類のユゴイ科の魚たちのうち、暮らしの場が海だけなのはギンユゴイだけだそうで、ギンユゴイがインド洋・太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く広く分布しているのも、海OKな生活の賜物なのだろう。

 分布域はかなり広大だというのに、暮らしの場は水面付近限定のギンユゴイ。

 同じ海水魚とはいえ、暗闇の淵に潜む深海魚とはまったく真逆の存在といえる。