水納島の魚たち

ハタタテギンポ

全長 5cm

 水納島におけるボートダイビングは、リーフの外で潜るのが基本だ。

 そのため、本来は最も身近な海であるはずの礁池内(いわゆるインリーフ、沖縄風に言うとイノー)にしかいない魚と出会う機会が少なくなる。

 ルリスズメダイムラサメモンガラなど、ビーチでおなじみの魚などは、水納島ではダイバーよりもむしろ海水浴客のほうが馴染みがあるはず。

 写真のハタタテギンポも、そんな「イノーにしかいない魚」だ。

 その名のとおり、背ビレの前部分がピヨーンと長くはためいている。

 観られる場所は主にリーフ内の藻場などで、海藻のふりをしながらフラフラユラユラと漂いつつ移動したり、チョンと何かに乗っかっていることが多い。

 ただし、目の前にありながらなかなかビーチに潜る機会がないワタシの場合、彼らを目にするのは、桟橋脇に係留している船のロープを手繰り寄せているときなどになる。

 ハタタテギンポは、海中に垂れているロープを拠所にして休憩していることもあるのだ。

 拠所にしていたロープを奪われたハタタテギンポは、

 「私は枯葉……」

 のようなポーズで静止したまま、しばし流れに身を任せ、いずこへともなく去っていく。

  そんなハタタテギンポをひとつじっくり撮ってみたいと思い、台風で連絡船は欠航しているけれどまださほど海が時化ていない頃を見計らって、普段滅多に入れない連絡船停泊側の桟橋付近に潜ってみた。

 すると、桟橋の壁に、チョンと載っている彼の姿が。

 素早くすばしこく逃げ去ったりすることはなく、実にいい子ちゃんのままいてくれたので、チョンと乗っている姿は無事撮ることができたのだった。

 ところでこのハタタテギンポ、今まで気づかなかったことがひとつ。

 これを書いている今、拡大した写真を見て気がついた。

 ハタタテギンポって……

 …目がハート♪

 追記(2026年5月)

 本文でも触れているように、水納島ではボートダイビングでハタタテギンポに出会う機会はまずない。

 そのかわり、桟橋脇ではおなじみのギンポでもある。

 桟橋脇は満潮時でも水深2mほどと浅いので、中途半端に残っているタンクを使ってちょくちょく潜りに行くオタマサは、そんなハタタテギンポのチビターレとも顔馴染みだ。

 梅雨入り頃の幼魚が増え始める季節に桟橋脇に潜入し、ジェットスキーやボートの係留用ロープや海藻などをチョコッと覗いてみれば…

 …光るオタマジャクシのようなチビターレとポコポコ出会える。

 5oほどのこんな激チビターレだけを見ただけではその正体は謎に包まれたままになるかもしれないところ、幸いにしてもう少し育っているチビターレも、同じような場所で出会うことができるのだ。

 これくらいまで育っていれば、わりとハタタテギンポっぽい。

 ぽいけれど、ウミヒルモの葉と比べてこのサイズだと、なんだかコロボックルっぽくもあるのだった。