全長 5cm
個体数の多さということなら、いつでもどこでも出会えるホシニセスズメ。
ただしそのサイズは小さく、人目を引く色をしているわけでもない。
しかも警戒心が強いため、同じ仲間のクレナイニセスズメが光さえ当てなければその姿をわりと拝ませてくれるのに対し、ホシニセスズメは視線を向けただけで「キャッ!」とばかりすぐに岩の隙間などに隠れてしまう。
そのまま待っているとやがて再び顔を出してはくれるものの、たいていこちらを警戒しつつ、逃げ場所の近くから様子を伺っていることが多い。
そのため姿を見かける機会が多いわりには、バッチリ真横からその姿を拝める機会がなかなかなく、肉眼での束の間の出会いだけだと、彼らホシニセスズメの名の由来でもある特徴に気づくことさえない。
↑このように写真を撮ってさえ、さほど気に留めずスルーしてしまうその「特徴」とは。
実は彼らの体にはその名のとおり、星模様がズラリと並んでいるのだ。
肉眼じゃ、基本的にグレーの地味な魚にしか見えないから、その名のわりには案外知られていないかもしれない。
初夏になると、チビターレの姿が目立つようになる。
これまた肉眼、それもクラシカルアイだとまず海中で気づくことは不可能ながら、このチビターレの眼をよく観ると…
あらら、意外にビューティホー!
しかも目はなにげに変形ハート。
瞳の形はともかく、この虹彩(?)部分のカラフルさはオトナになると薄れる傾向があるような気がするから、チビターレならではかもしれない。
※追記(2025年5月)
長い間、ホシニセスズメの尾ビレは黄色いものだとばかり思って生きてきた。
上記本文中で紹介しているものはもちろん、図鑑でもネット上の画像でも、尾ビレが黄色いものばかり。
ところが3年前(2022年)の梅雨時期に出会ったホシニセスズメは、少しばかり様子が違っていた。
手前側にいるホシニセスズメの尾ビレは黄色いけれど、それを執拗に追いかけていた奥側の子の尾ビレは…
…黄色くない!
上端に黄色い帯があるだけで、全体は体の色とほぼ変わらない。
はてさて、これはどうしたことだ?
ストーカーのごとき執着ぶりからすると、これはメスに猛烈にアタックしているオスってことだろうか。
その翌年(2023年)の春にも、尾ビレが黄色くないホシニセスズメに出会った。
あいにくその時には前年の梅雨時のことなどすっかり忘れていたから、最初は別種のニセスズメかな…と思ったんだけど、これってホシニセスズメですよね?
その年の梅雨時に、再び2匹でアヤシイ動きをしているホシニセスズメと遭遇した。
今回もまた、追いかけている方の尾ビレは上端だけが黄色いのみで、全体は体の地色と同じだ。
ところが今度は、追いかけられている小ぶりなほうの尾ビレも、ほとんど黄色が目立っていない。
そして、↑このアングルじゃわかりづらいけど、そのお腹は…
…ポッコリ膨れている。
これはまず卵とみて間違いないでしょう。
ということは、ホシニセスズメの尾ビレが黄色ではなくなっている時ってのは、やる気モードカラー(興奮色)ってことか?
岩陰の麗人だけにそもそもの居場所が人知れず感満載だから、あえて観ようとしないかぎりなかなか目に入ってくる機会が無いホシニセスズメなので、気にし始めたらそこらじゅうにいるにもかかわらず、今さらながら初めて気がついた尾ビレのヒミツなのだった。