水納島の魚たち

ホシゾラダルマガレイ

全長 10cm弱(写真の個体)

 砂底環境で潜るオタマサは、いつも砂底サーチを繰り返している…という話は拙日記でもたびたび触れているとおり。

 一望の砂底を逍遥していれば、ともすれば不毛に終わることもあるかわりに、そういうところでしかありえない出会いもある。

 ようやく梅雨に入った5月末のこと、いつものごとく砂底をウロウロしていたオタマサは、「?」なカレイと遭遇した。

 ご存知のように水納島の砂底にはこのテのカレイ類が多く、最も馴染み深いのがトゲダルマガレイなんだけど、どうもトゲダルマガレイとはフォルムが違うように見える…

 …ってことで「?」マークを頭の上に浮かべつつ、とりあえず画像記録に残しておいたオタマサ。

 変わったカレイがいたというので、後刻PC画面で見せてもらったところ、なるほどたしかに顔の輪郭(?)のフォルムがトゲダルマガレイとは異なっている気がする。

 砂底では、何カレイの若魚なんだかよくわからないすばしっこい動きをするチビカレイもしょっちゅう目にするものの、動きはわりと緩慢だったということからするとどうやらそれらとは違うようだ。

 あと遭遇機会が稀なモノといえば、モンダルマガレイにタイコウボウダルマもいるけれど、それらではないことはまず間違いない。

 じゃあ…誰だ?

 画像を拡大して見ていたところ、重大な特徴に気がついた。

 両目の外側に、カラフル模様のヒダがあるではないか。

 片目を拡大。

 こんな特徴を持っているカレイなんて、見たことない!

 そう言うとオタマサは、

 「そうなのよ!」

 気がついていたんならそれを先に言えよ!

 そこで「目の外側にひだがあるダルマガレイの仲間」で検索してみたところ、標本写真がズラリと並ぶなか、フォルムが似ている画像があった。

 さっそくそのウェブサイト(高知大学理工学部生物科学科海洋生物学研究室ホームページ))を訪ねてみたところ…

 本種の雄は眼のやや外側後縁に目立った皮弁をもちます

 …と、写真付きで紹介されている。

 しかも

 ダルマガレイ属30種の中で、雄がこのような皮弁をもつ種は、本種と E. xenandrus Gilbert, 1905(ハワイ諸島周辺の固有種)のみで、本種とは皮弁の縁辺の房の有無で容易に識別できます(本種には房がない)

 ときたら、これはもう間違いなく…

 ビンゴ!

 このカレイ、その名をホシゾラダルマガレイという。

 新種としての記載自体は20世紀の初めくらいのようながら、日本初記録種として和名が登場したのは今世紀になってからのことらしい(おそらく10数年前くらい)。

 ホシゾラという名前は、体の表側(有眼側)に散らばる白い斑点模様を星空になぞらえたものらしいのだけれど、あいにく白い砂底にいるだけに、白い模様が目立つような体色ではまったくないうえに、自ら砂をかぶっているものだから「星空」はまったく感じられない…。

 オタマサによると海の中では10cmほどに見えたというから、おそらく7〜8cmくらいだったのだろう。

 先の引用元のサイトによると、得られた4標本は5cmちょいから7cmちょいだったそうだから、これくらいが成魚サイズなのだろうか。

 成熟オトナサイズは不明ながら、個体数が少ないからなのか、砂底を徘徊する不毛ダイビングをするヒトがなかなかいないからなのか、そこにいたとしても気がつかないからなのか、生態写真はそれほど世に出ていないようだし、採集例自体もそれほど多くはないようだ。

 たしかに、ただでさえ砂底の色と同じになっているうえに、↓このように体表に砂をまぶしてほぼジッとしているんだもの…

 …オタマサのように視野30度でサーチしてでもいないかぎり、そうそう遭遇チャンスはなさそう。

 すなわち、レアもの。

 砂底徘徊おばさんオタマサ、またしてもヒット賞!