水納島の魚たち

イチモンスズメダイ

全長 7cm(写真は2cmほどの幼魚)

 ルリスズメダイの仲間に、こんな子がいたなんて知らなかった!!

 ……という方がいらっしゃってもおかしくはない。

 というのも、このスズメダイはリーフの外ではまず見られないといってよく、むしろビーチで海水浴をしている方のほうがよっぽど目にしていると思われる。

 ただしビーチにいるといっても、残念ながらそこかしこで群れ集っているわけではない。

 1匹1匹が縄張りを持つタイプのスズメダイなので、ポツポツポツ…という具合に点在している程度でしか観られないのだ。

 そのうえ上の写真の子は随分小さな子供であって、成長すると、みなさんのご想像どおり、地味地味ジミーになってしまう。

 その前段階は、体に色が増えていくくらいで、まだ美しさは保たれている。

 でもここからさらに成長すると…

 くすみ始めた体に、この先消えていく感たっぷりの青いライン。

 このあとの地味地味ジミーな姿形は、容易にご想像いただけよう。

 …といいつつ、あまりにも地味すぎてスルーしてしまうのか、恥ずかしながらワタシはこれまで海中でオトナを認識したことはないのだった。

 追記(2025年12月)

 今秋(2025年)はボートを長らく上架したままにしていたこともあり、リーフ内を潜る機会もチョコチョコあった。

 そういう場所でしか会えないイチモンスズメダイにも、久しぶりに再会。

 本文中でも触れているとおり、けっして群れ集っているわけではないものの、波打ち際にほど近いあたりでさえ、狭い範囲にたくさんチビターレがいるので、1m四方を見渡すだけで各成長段階のチビたちに会える。

 せっかくだから、あらためてその成長段階を順に追ってみよう。

 1cmほどのチビターレの頃。

 2cmほどになると…

 …個体によっては早くもメタリックブルーのラインが消える準備をし始め、体もややくすんでくる。

 そして3cmほどになると…

 …背ビレ後端付け根に新たな眼状斑が現れてきて、体はどんどんくすんでくる。

 さらに成長して4cm弱くらいになると、あれほど輝いていたメタリックブルーは、名残りだけになる。

 と、ここまではこれまで何度も追跡してきたイチモンの成長の様子なのだけど(追跡も何も1m四方で見られるんだけど…)、このあとの段階、すなわちオトナのイチモンスズメダイを海中で認識したことが一度も無い。

 成長すると10cmほどにもなるというイチモンスズメダイのオトナが、いったいどこにいるのか全然知らない。

 いまだ10cmものイチモンスズメダイを認識したことはないものの、オトナっぽいイチモン君をこの日初めて海中で認識できた。

 5cmほどの若魚段階ではあるけれど、メタリックブルーのラインは完全に消失している。

 10cmといったら体長体高でこれの倍、面積になると4倍になるんだから相当でっかい。

 実はこれまでフツーに目にしてはいても、クロソラスズメダイかなにかと勘違いしているだけだったりして…。