全長 4cm
このハゼを水納島でご覧になったことがある方が、いったいどれほどいらっしゃるだろうか。
というのも、図鑑的にはさほど珍しいハゼではないのだけれど、彼らが好む生息環境が内湾の中程から湾奥、つまり潮通しのあまりよくない砂泥混じりの海底ということもあって、水納島(で普段ファンダイビングをしているところ)では見かける機会が少ないのだ。
多様な環境を有する大きな島であれば、そういった本来の生息環境からはみ出た(?)ものたちが潮通しのいいリーフ際などにいることもあるのかもしれないけれど、水納島の場合、キンセンハゼが本来好む環境がほとんどないのかもしれない。
ところがどういうわけか、2010年前後の一時期だけ、目にする機会がポッと増えたことがある。
当時はそのほかにも内湾域を好むとされている魚たちがポツポツ個人的初登場したこともあって、ひょっとすると、水納島の海底環境が湾奥のように泥が増えてきているということなのかもしれない…と考えたこともあった。
それはそれでそれまで見られなかった魚に出会えるようになるわけだから、そこにだけ注目すればうれしく楽しいことではある。
でも元々の環境を好む他の魚たちにとっては環境「悪化」以外の何物でもないわけで、そう考えると素直に喜んではいられない。
はたしてこの先どうなることやら…
…と心配していたところ、幸か不幸か2012年に出会ったのを最後に、キンセンハゼにはまったく出会えていない。
単に一時期だけ爆裂台風が相次ぎ、キンセンハゼたちは本来の居場所から流れ流れてたどり着いていただけなのだろうか。
ともかくも急速な環境悪化というわけではなさそうだ。
水納島のキンセンハゼは個体数が少ないからか、個体数が多いところでももともとそうなのか、キンセンハゼは単独でポツンと暮らしている。
海底を這うタイプのハゼではなく、ツンツンと浮いて過ごしているので、そこに居さえしてくれればわりと見つけやすい。
全体的に体つきが薄っぺらく見えるのだけど、よくよく見てみると、その顔つきはどことなくサラサハゼに似ている。
…と思ったら、キンセンハゼはサラサハゼ属なのだった。
恥ずかしながら今の今まで(2020年12月)、まったく知らなかった…。
知らなかったといえば、キンセンハゼの第1背ビレ。
特徴的な眼状斑があるからついつい第2背ビレのほうに目が行きがちだけど、第1背ビレには赤い模様もついている。
出会う機会は少ないし、今のようにネット上でいくらでも画像を見ることができなかった当時、図鑑くらいでしかキンセンハゼの画像を目にすることがなかったこともあって、キンセンハゼの第1背ビレはがんばって開いていてもせいぜい↓こんなもの…
…と思い込んでいたワタシ。
ところが!
2020年12月にアップされた天下の大御所大方洋二さんのブログに登場しているキンセンハゼときたら、のっけから第1背ビレ第全開!
キンセンハゼの第1背ビレって、ここまで雄々しく立ち上がるのか!!
知らんかったなぁ…。
それもそのはず、これを機にいろいろこのテの変態社会に潜入して調べてみたところ、キンセンハゼってなかなかこの第1背ビレを広げてくれないらしいのだ。
そのため多くの変態社会人たちは、キンセンハゼにカメラを向けながらジリジリタイムを過ごしているという。
そんな撮影者泣かせのキンセンハゼの第1背ビレ全開写真を、キンセンハゼの分布域ネタでこともなげに披露されているあたり(アクビの写真まである)、さすが天下の大御所。
ワタシがそんなものを撮ってしまおうものなら、こともなげでもさりげなくもなく、大騒ぎしてここに追記することだろう。
が。
水納島でキンセンハゼに会えなくなって、もう8年経ってしまっている(2020年現在)……。
はたして次のチャンスは巡ってくるか?
大騒ぎ必至の追記を待て。
※追記(2026年5月)
その後の5年間も会えないままで終わっていたキンセンハゼ。
しかし今年(2026年)4月末に、14年ぶりに再会できた!
…オタマサが。
それも、これまでのような若い個体ではなく、第1背ビレの模様も色鮮やかな5pほどのオトナだ。
しかもその背ビレを、アクビの際に全開!
やや後方からながらも、背ビレは当サイト史上最大級の広げっぷりだ。
撮っている最中にはこれが久しぶりの遭遇であることになどとんと気づいていなかったオタマサによると、このキンセン君はわりとおりこうさんだったらしく、カメラを向けても物怖じすることなく普段の様子を見せてくれていたという。
場所も教えてもらったことだし、是非ワタシもナマで拝見させてもらうとしよう。
…というわけでその4日後の5月3日、オタマサに教えてもらったキンセンポイントをさっそく訪れてみたところ…
いた!
発見までずいぶん時間がかかったものの、キンセン君がおりこうさんでいてくれるおかげで、発見後はじっくり拝見することができた
すると、サンゴの枝間に隠れるようにしながらホバリング状態で静止しつつ、スルスルスル…と動いては、
岩肌やサンゴの死んだ部分の藻が生えているあたりを「ハポッ…」とひと食みし、すぐにホバリングポーズに戻り、エラから砂粒を排出するキンセン君。
カメラを向けていても物怖じすることなく、むしろ時々カメラの方に近づいてくるほど。
周辺のどこを見渡してもボッチだけに、ポートのガラス面に写る自分の姿に反応しているのだろうか。
とにかくおりこうさんでいてくれるおかげで…
…こっち向きでアクビちゃん。
これでもう思い残すことはない。
まさに値千金…いや、値キンセンのアクビなのだった。