水納島の魚たち

コガネキュウセン

全長 12cm

 コガネキュウセンをはじめ、〇〇キュウセンという名のベラは多い。

 それらを「キュウセンの仲間」と呼びたいのはやまやまながら、「キュウセン属」に属する種類は本家本元のザ・キュウセンだけで、コガネキュウセンほか〇〇キュウセンと名がつく仲間たちはみんな、「ホンベラ属」になる。

 となると〇〇キュウセンたちを「キュウセンの仲間」というわけにもいかず、かといってザ・ホンベラは沖縄の海で観られるのかどうかというくらいの種類だから(少なくともワタシは観たことがない)、「ホンベラの仲間」というのもしっくりこない。

 しょうがないのでこのコーナーでは「ミツボシキュウセンの仲間」ということにした。

 ただ。

 日本に150種類以上いるにもかかわらず、「ベラ」は「ベラ」だとうそぶくベテランダイバーは多い。

 そううそぶく方たちでもナポレオンには「おおっ…!!」となっていたりするから、なんだかんだ言いつつ実際はなにもかもを「ベラ」で済ませているわけではない気配もありはする。

 しかしこの「ミツボシキュウセンの仲間」となると、ホントに「ベラ」で終わってしまっているベラたちの最たるものといっていいかもしれない。

 実際、ニシキキュウセンだ、いやツキベラだ、おお、カザリキュウセンだ、カノコベラだ、といったこのグループに属す魚たちを観て盛り上がっているヒトには、過去26シーズン(2020年終了時)を通して出会ったことがない。

 一方、この仲間たちは浅いところにたくさんいて、日中フツーに産卵シーンを見せてくれるものが多いということもあってか、研究対象になっているケースがよくあって、研究対象はミツボシキュウセンです、といった方々には過去に会ったことがある。

 やはり変態社会向けの魚たちなのだろう。

 そんな変態社会御用達のミツボシキュウセンの仲間たちにあって、このコガネキュウセンだけは一般健全社会寄りのポテンシャルを秘めている。

 なんといっても全身キレンジャー。

 魚たちの世界では「黄色」がなにやら特殊カラー扱いで、いろんな魚にノーマルカラーとは別の「黄化個体」が観られるのだけれど、このコガネキュウセンはノーマルカラーがキレンジャーなのだ。

 コガネキュウセンのオトナたちは、それなりに水深がある砂地の根のすぐ近くの砂底付近に集まって餌を探していることが多い。

 水納島のような白い砂底だと、青い海と白い海底、そしてコガネキュウセンという絵柄がなんともトロピカル。

 ときには10匹くらい集まっているキレンジャーたち、そのグループのなかの一番大きな1匹だけがオスのようだ。

 オスもキレンジャーではあるのだけれど、顔のあたりにいかにも「ミツボシキュウセンの仲間」らしい帯模様が入っている。

 海底でエサを物色しているときは閉じられている背ヒレは、「オス」として泳いでいるときなどには立てていることが多い。

 オスの背ビレには冒頭の写真のチビの頃のような眼状斑は無く、先端に黒い模様がついている。

 このオスの背ビレの先端にある黒い模様はチビの頃の眼状斑がそのまま模様になっているわけではなく、成長してメスになる頃には消失しているっぽい。

 いったん眼状斑が消失してから、オス模様が出てくるようだ。

 オスの周辺で思い思いにエサを探しているメスたちは、チビターレの頃の眼状斑の名残りを背ビレに残しつつも、顔に帯模様は無く、全身キレンジャーだ。

 根のそばの海底では他の魚もエサを探していることが多いので、ちょくちょく↓こういうシーンも観られる。

 オスも、通りすがりのヒメジ類のそばでおこぼれ狙いをしている。

 砂底のエサを好むベラたちにとって、砂中のエサ探し名人ヒメジ類はなくてはならない人生的パートナーらしい。

 このように根の周辺の砂底でエサを探しているグループを構成しているのは若魚からオトナサイズのものたちで、チビターレは拠り所の根から離れることはまずない。

 2cmくらいのチビターレは眼状斑が目立ち、黄色い体とも相まってやたらと可愛いい(これくらいチビの頃までは、背ビレ先端の眼状斑が無い)。

 オトナたちもエサ探しの流れで根に立ち寄ることもあるのだけれど、根には他の魚たちが多いこともあるからか、ときにはクリーニング行動を見せることもある。

 どちらのオジサンもクリーニングケアを求めるだらしない口になっているところを見ても、これがたまたまではないことがわかる。

 普段エサ探しの際にお世話になっている分、ある程度の「返礼」も必要なのだろう。

 このように注目して見るとなかなか興味深いし、マッキッキの体も他のミツボシキュウセンの仲間には観られないという、実に注目すべき要素に満ち溢れているコガネキュウセン。

 でも砂地のポイントで根を巡ればいつでもどこでもたいてい観られる遭遇頻度のあまりものフツー度が災いしているのか、一般健全ダイバー界における扱いは、ほとんど他のミツボシキュウセンの仲間たちと変わるところは無いのだった。