水納島の魚たち

ミナミハタタテダイ

全長 15cm

 ハタタデダイ類がチョウチョウウオである、というのは、魚に興味を持ち始めたとき、ちょっと意外に感じたことの一つだった。

 「ハタタテ」があまりに特徴的なので、イメージとしては別物だったのだ。

 でも、ハタタテダイ類を海中で見れば、彼らはまぎれもなくチョウチョウウオであることがわかる。

 ムレハタタテダイのように群れ集うタイプでないものは、たいていカップルで仲良く暮らしている。まさにチョウチョウウオだ。

 ただし一般的なチョウチョウウオ類に比べるとやや物陰を好む傾向があって、ちょっとした岩の陰とかサンゴの下とかで、2人仲良くじっとしている、ということが多い。

 ミナミハタタテダイは、それらハタタテダイ類の中では群を抜いて可愛い魚だ。

 他のハタタテダイ類に比べて太やかな背ビレが、まるで風になびく幟のようにヒラヒラとはためき、吻端のポッとほのかに灯ったようなオレンジ色がとっても目を引く。

 ただでさえおちょぼ口なのに、その口先がオレンジ色なものだから、それだけで人の心を捉えてしまう。

 眼状斑まである幼魚は、その可愛さがさらに際立つ。

 覚えやすい特徴が多いので、海から上がったダイバーにも覚えていてもらえるシアワセな魚、それがミナミハタタテダイ。