水納島の魚たち

ミナミイソハタ

全長 15cm

 ハタの仲間は種類が多いとはいっても、普段水納島でしょっちゅう潜っているところでは、さすがにもう「これまで観たことがない」ハタに出会うことはないだろうと思っていた。

 ところが今年(2019年)、リーフエッジ付近の浅いところで、これまで観たことがない(もしくは認識したことがない)ハタに出会った。

 それがこのミナミイソハタだ。

 尾ビレ付け根上端にある、大小2つ並んでいる黒斑が目印になる。

 オトナになっても15cm程度の小型のハタで、だからだろうか、ボス的な己の主張をすることなく、日陰にひっそりとたたずんでいるのが普段の姿のようだ。

 浅いところにいるハタだというのにこれまで気がつかなかったのは、彼らのそういう暮らしぶりのせいかもしれない。

 ボス的な素振りは見せないとはいっても、さすがに縄張りはあるようで、初めて出会った場所で、それ以後も何度も出会うことができている。

 もっとも、さしてトロピカル感があるわけではないうえに暗いところにいるから、絵になる魚ではないけれど。

 ただでさえトロピカル感が薄いその体色は、もっと緑がかった色になっていることもある。

 小ぶりなだけに、この体色で正面を向いていると、なんだかゴンべの仲間のような趣すらある。

 しかしゴンべの仲間かと見紛う彼も、やはりハタはハタ、ウツボが大嫌いらしい。

 小さな小さなハナビラウツボが顔を出しているところへ、キッチリ嫌がらせをしに行くミナミイソハタ。

 まずは胸ビレでウリウリとやってから…

 下半身でビシバシしばき倒す。

 ワタシの小指ほどの太さしかないハナビラウツボチビターレ、まったくなすすべ無し。

 ハタのサイズがどうであれ、ハタとウツボの関係は、こーゆーものであるらしい。