水納島の魚たち

ナガブダイ

全長 50cm(写真は3cmほどの幼魚)

 特にベラやブダイのチビたちを探し求めていたというわけではなかったはずなのに、2019年に撮った写真には、どういうわけだかブダイのチビターレがそれ以前では考えられないほど多い(それ以前はゼロに等しいともいう…)。

 はてさて、なんでだろう?

 あ。

 そうだった、その前年からD7200を使用するようになっていて、オートフォーカスで小さい魚も撮れるものだから、調子に乗って目につく魚を片っ端から撮っていたからだ。

 クラシカルアイの進行により、もはや泳ぎ回る魚のマクロ撮影などやっていられない…と諦めていたところ、技術の進化は我が目の退化を凌駕していたのである。

 見えてないモノが撮れるなんてスゴイ…。

 そうなるとある意味誰が撮っているんだかわからない写真ながら、このナガブダイ(と思われるブダイ)のチビターレの写真記録が手元にあるのは、まさにAF機能のおかげ。

 例によってよくある縦縞模様ながら、ナガブダイ・チビターレの場合は背側横縞っぽく見える模様が入っていることで見分けられる…

 …ということになっている。

 「オス」は50cmくらいになる大きなブダイで、基本的にオトナは岩場のポイントのようなところを好むのだろう、水納島の砂地のポイントで観られるのはチビくらいかもしれない。

 でも繁殖期ならではなのか、ときおりメス(の体色をしているもの)たちが集団になって、砂地のポイントのリーフエッジ付近の浅いところをドドドドド……と駆け抜けていくことがある。

 なにしろブダイはチビターレにあり(※個人の感想です)だから、ナガブダイのオトナを認識するのはこういう時くらいのもので、「オス」にいたっては記憶の欠片にも残っていない。

 ナガブダイのオスを認識するなら、ブダイ眼になっている今(2021年2月)が人生最大のチャンスかもしれない…。 

 追記(2021年3月)

 ブダイ眼になっているこのオフ(2020年〜2021年)は、普段ゲストと潜っている通常のダイビングコースでは飽き足らず、タンクを背負った状態では滅多に訪れないところにもブダイ眼を向けている 。

 といっても、昼なお暗い深場というわけではなく、それとは真逆のリーフの上だ。  

 リーフエッジ付近はお馴染みでも、完全にリーフの上となると時に浅すぎるし波があるとどうしようもないので、もっぱらスノーケリングの世界になる。

 なのであらためてそういうところをタンクを背負って潜ってみると、普段のダイビングでは見慣れないブダイの仲間たちがわんさかいて、ブダイ眼にはとっても眼のご馳走な世界が広がっていた。

 これまで認識したことが無かったナガブダイのオスも、そんなリーフ上で実に堂々たる姿を晒していた。

 細身に見えるけれど40cmはあるので、リーフ上ではけっこうな存在感を放っている。

 ただしでっかい分1匹1匹の行動範囲はかなり広く、おまけにリーフ上というヒトも交えれば厳しいサバイバル環境のせいか、遠目に呼吸音を聞くだけですぐに逃げの態勢に入るほど警戒心が強いナガブダイのオス。

 そのため堂々たるその存在感を間近で拝ませてもらえる機会はまずない。

 なるほど、これまでその姿を認識したことが無かったのも無理はない…。

 そんなオスは、1本のダイビングでリーフ上に2〜3匹確認できた。ところが集うときにはあれほど大軍団を作るメスは、不思議なことにパラパラと観られる程度でしかなかった。

 大軍団を作るメスたちは、普段はどこで暮らしているんだろう?

 追記(2021年11月)

 …という疑問を常に頭の片隅に残しつつ2021年シーズンを過ごしていたところ、砂地のポイントのわりと深めの砂底で、たびたびナガブダイのメスに会う、というジジツを初めて認識した。

 しかも、リーフ上で見かけるメスたちに比べ、その体格は随分でかい。

 深めの砂底で軍団を作っているのは観たことがないし、ここまで大きいものがリーフエッジ付近で大集団になっているのも観たことがない(気がする)。

 つまり、小柄なメスたちは集団産卵方式を選び、大型の成熟メスはオスとのペア産卵をしている……ということなのだろうか?

 追記(2022年12月)

 ナガブダイのオスを意識するようになってから、わりと深めの砂底でもその姿を見かけることがあることがわかった。

 リーフ際の死サンゴ石が多めのあたりでも見かけることがあるものの、場所がどこであれそうそう近寄らせてはくれず、たいてい目にするだけで終わってしまう。

 ところが今夏(2022年)、メスと一緒にいるところをお邪魔することができた。

 3〜4匹のメスがずっとオスと行動を共にしているところをみると、どうやらモテ期の絶頂にあるらしい。

 オスはそれがよっぽどうれしいらしく、全身でヨロコビを表わしているようだった。

 いつになく近寄らせてくれたのは、ヨロコビモードのおかげだったのかも。