

全長 40cm
この属の魚たちのなかでは、とにかく格段にでかい。
そして渋めの体色が、オトナの雰囲気を醸し出している。
にもかかわらず仲間内では最も臆病で、なかなかじっくりその姿を拝ませてはくれない。
ホンソメワケベラのクリーニングケアを受けているときですら、最初から「いつ逃げようか…」ということしか考えていなさそうに見える。
タテキンやサザナミが単独でいることが多いのに対し、ロクセンヤッコは仲良くペアで行動を共にしているほうが圧倒的に多い。
ビビリだから、2人でいればコワくない…ってことなんだろうか。
ただし持ち前の警戒心の強さのため、こちらが彼らを察知した頃には、早くも逃げの準備に入っていたりする。
かつての水納島では、ロクセンヤッコといえば岩場のポイントで観られる魚というイメージだった。
ところがここ10年くらいの間に(2017年現在)、どういうわけか砂地のポイントでも目にする機会が随分増えた。
岩場で出会う際はほぼペアなのに、砂地のポイントではたまに1匹で過ごしてるものにも出会う、という違いはあるけれど、いずれにしてもオトナのサイズはでかいから、それに応じてナワバリの範囲は相当広いのだろう。
砂地の各ポイントでちょくちょく目にするようになったとはいっても、ひょっとすると同じペアを別の場所で観ているだけなのかもしれない。
写真のロクセンヤッコは、たまたまこの時砂地の根に1匹でいた。
ロクセンヤッコとムレハタタテダイの競演なんて、ムレハタタテダイの群れが姿を消してしまって久しい今では、なんともゼータクな風景だ。
※追記(2025年11月)
現在では砂地のポイントでもすっかりおなじみの魚になっているロクセンヤッコだけど、今夏(2025年)リーフ際で出会ったロクセンヤッコは、なにやらエマージェンシーモードになっていた。
本文中でも触れているように、近年は砂地のポイントのリーフ際でもフツーに会えるようになっているとはいえ、大型ヤッコだけにその縄張りは広いはずだから、しょっちゅう会ってはいても個体数が多いというわけではないのかもしれない。
それでも会う時は、ほぼほぼ必ずペアで泳いでいるロクセンヤッコたち。
ペアでいる時は、警戒心は強いもののゆったりまったり泳いでいて、でっかいだけになんとも優雅な雰囲気を湛えている。
ところが今夏リーフ際でエマージェンシーモードになっていたロクセンヤッコたちは…
3匹!
ロクセンヤッコが3匹でいるところなんて、初めて観たかも…。
形勢的には2対1のような雰囲気だったけれど、ペアに他の1匹が横恋慕してちょっかいを出しているのか、2匹のオスが1匹のメスを巡って争っているのかは不明だ。
とにかく普段のゆったりまったりとは全然違って、激しく泳ぐロクセンヤッコたち。
このままリーフ際を果て無く進まれたらついていけなかったところ、幸いにも↑このあとトリプルロクセンはリーフの切れ込みに入っていったので…
…これ幸いとばかりに動画でも撮ってみた。
出入口をワタシが塞いでいる格好になっているため、それまでのエマージェンシーモードから若干警戒モードになってしまったこともあって3匹の関係性がわかりづらいものの、おおむね追尾状況は続いていた。
ちなみに動画の27秒あたりで聴こえる「ガッ!」という音は、ロクセンヤッコが顎を鳴らして発する威嚇音。
ロクセンヤッコが岩陰に隠れている際に岩陰からこちらに向かって「ガッ!ガッ!」と鳴らすことはよくあるけれど、泳いでいる時に鳴らすのは初めて聴いた。
それがワタシに向けてのモノなのか、追いすがる相手に向けてのモノなのかは不明ながら、頭上を通過して再び外に出ていったトリプルロクセンは、トリプルのままリーフ際に沿って泳ぎ去っていったのだった。
トリプルロクセン、後にも先にもこの時一度限りということになるかもしれない、まさに千載一遇。p>
記録に残せて良かった良かった。