水納島の魚たち

ロウソクギンポ

全長 7cm(推定)

 今年(2023年)5月、GWも終わってのんびりモードになっている島は、おりからの北風で冬のような様相になっていた。

 寒いわ北風は強いわでダイビングは諦めたのだけど、午後にマイナスまで潮位が下がる大潮だったので、干潮時ちょい前くらいにカモメ岩方面のタイドプールを巡ってみた。

 タイドプールとは言ってみれば水溜まりなんだけど、その規模は大小様々で、ほんの小さな水溜まりでも実に多彩な生き物たちが暮らしている。

 なかでもヤドカリさんにはそういった浅い水場を好む種類が多いので、この日はヤドカリさんを目当てに水溜まりを覗いていたところ、水深3cmほどのところで穴から顔を出しているギンポに出会った。

 オトナになってもとてつもなく浅い環境を好むギンポの仲間たちは多く、これまでかろうじて記録に残せているのはほんのわずかながら、この日出会ったギンポは、これまで目にしたことがない(はずの)種類のように思われた。

 ちなみにここで紹介している写真はすべて「水中写真」ではなく、水面越しに撮っているもの。

 最初はホホグロギンポかな…と思ったものの、顔の模様の感じが異なっている。

 はてさて、誰ギンポだろう?

 後刻調べてみたところ、どうやらこれはロウソクギンポっぽい。

 ロウソクギンポといえば、一部の変態ダイバーの間で一時大ブームになり、カメラを抱えた黒いスーツのダイバーが潮間帯でひしめき合う…なんていう気持ち悪い光景をサイパンあたりで生み出していた張本人だ。

 ただしそういった方々がお撮りになった写真を拝見したかぎりでは、ロウソクギンポのマツ毛(眼の上の皮弁)は勇ましいほどにピンッ!と長く立派なものばかり。

 それに比べると、この時会ったロウソクギンポのマツ毛はチリチリ縮んでいるようでなんだかショボい。

 ちゃんと水中で横から見たらピンッ!と伸びているのかな…。

 ここなら、もう少し潮があれば、水面を鏡面にしたお馴染みの写真が撮れるかも。

 水面越しの人生初遭遇は果たせたので、今度は「海中」での初遭遇を目指そう。