水納島の魚たち

ミゾレチョウチョウウオ

全長 10cm

 数多いチョウチョウウオたちのなかで、何でも食う雑食の帝王輝け!第一位!!といえば、このミゾレチョウチョウウオだ。

 基本的にサンゴ礁域ではサンゴのポリプを好んで食べるらしく、イソバナのポリプも好物のひとつらしいのだけど…

 だからといって、どうしてもポリプじゃなきゃダメ!ということではないようだ。

 そのため写真下のように、勢揃いしてオヤビッチャの卵をしきりについばむこともある。

 とにかく何でも食べる。

 近年はSDGsの観点から…ということで、本部町内の業者さんでもしっかりしたところはスノーケリングでさえ餌付けをしないようになっているのだけれど、水納島に本島からやってくる業者のなかには、スクーバダイビングでさえ餌付けをしているところもまだしぶとく残っている。

 彼らが餌付けを行っている場所では、この雑食大喰らいのミゾレチョウは、こういうことになってしまう。

 手に餌など持っていないのに、与えるフリをするだけで、このようにあちこちからウジャウジャと集まってくる始末。

 ダイバーと見るやこのように集まってこられると、他の魚の写真を撮ろうとしている際に被写体の前に立ちふさがるようにカメラに寄ってくるから邪魔でしょうがない。

 一方でチョウチョウウオ類は、餌付けのエサにつられて寄ってたかっているわけじゃないのに、突如集団になることもある。

 ミゾレチョウも繁殖期だからか、時にはリーフエッジ付近で普段見せないグループ行動をとっていることもあるんだけど…

 業者が餌付けをしていると、自然下における独特の行動が、餌付けされて魂を失ってしまった魚たちに見えてしまうかもしれない。

 餌付いていなければまず群れることは滅多にないミゾレチョウでも、沖縄ではどこにでもいるから、潜れば潜るほどダイバーはだんだん相手にしなくなる。

 ところがそれが秋以降の伊豆など本土の海では、南からの使者としてミゾレチョウもみんなに歓迎されている。

 そんな季節来遊魚として内地の海でもてはやされる幼魚は、夏以降なら水納島でもダイビング中に出会うことができる。

 餌付けられて安易に群れ集うオトナたちにくらべ、幼魚のなんと可憐でいたいけなことか……。