水納島の魚たち

スマ

全長 40cm(成長すると100cmにも達するらしい)

 毎年夏から秋にかけて、弾丸のような体形のギラギラ光る魚の群れが、それこそ弾丸超特急のようなスピードでリーフ際を駆け抜けていくようになる。

 スマの群れだ。

 エサとなるキビナゴがリーフ際に多くなる季節になると姿を現すようで、ひとたびキビナゴの群れをロックオンすれば、水中から水面に向け、突き刺さる勢いで矢のように猛然とダッシュする。

 洋上からその様を観ていると、海中からゴジラでも出現しそうなほどに、海面が大騒ぎになる

 パニックに陥ったキビナゴたちは飛び跳ねて水面上に活路を求めるも、空中に待機できるはずはなし、ロックオンされたキビナゴたちに、逃げきるすべはない。

 ただしそのようなシーンを海中から眺めているときは、スマたちのダッシュがとにかくメチャクチャ速いため、なんだか砲弾のような魚が通り過ぎていった…くらいにしか見えないかもしれない。

 滅多にないけど状況によってはのんびり泳いでいることもあり、ツムブリの群れと一緒になって巨群を作っていたスマたちは、実に悠々とのどかに泳いでいた。

 そういう時なら、スマたちの体の模様を確認することができる。

 カツオに似ている体形ながら、カツオとはひと味違うスマの模様はこんな感じ。

 カツオが腹側に縞模様があるのに対し、スマは背側に斜めに模様が入っている。

 見慣れてくるとたとえ高速ダッシュをしているときでもこの背側の模様が見えるから、すぐにそれがスマであることがわかる。

 年によっては春から彼らの群れが観られることもあるけれど、弾丸超特急巨群が目の前を通り過ぎていったら、そろそろ秋がそこまで来ている……という雰囲気がある。

 ちなみにスマは各地方での方言名にはいろいろあれど、どこであれ冬に獲れた脂ののったものはカツオに勝るとも劣らぬ…いや、カツオに勝る激ウマ魚として知られている。

 土佐の地を訪れた際は冬だったこともあり、本家カツオではなくこのスマ(ご当地ではモンズマガツオと呼ばれていた)をいただく機会のほうが多く、これが大層美味しかった…あ、思い出しただけでヨダレが。