水納島の魚たち

タカサゴ

全長 MAX30cm おおむね25cm

 ニセタカサゴの稿でも触れたように、これまで撮っていたタカサゴ系の群れの写真は、全部ニセタカサゴだったことが判明してしまった。

 そのため、冒頭を飾るべきタカサゴの群れの写真は、今のところ無い。

 でも他のグルクン類に混じってタカサゴが写っている写真はある。

 疎らな群れなので迫力はないけれど、ここには3種類のグルクンがいる。

 イッセンタカサゴクマザサハナムロに混じって一緒に泳いでいるのは…

 まぎれもなくタカサゴ。 

 タカサゴ、いることはいるのだ。

 いつも他種と混じっているというわけではなく、ホンソメワケベラのクリーニングステーションに降下している最中の写真を観てみると、全員タカサゴだったりする。

 ということは、この時上層にいた群れの本隊は、タカサゴメインだったのかも。

 ようするに、タカサゴだってフツーにいてフツーに群れているにもかかわらず、ワタシが撮っていたタカサゴ系の群れは、なぜだかウルトラ級の確率でニセタカサゴばかり……ってことなのだろう。

 ところで、グルクンたちはこのように一部の者たちが群れから離れ、ホンソメワケベラのクリーニングを受けるべく次々に降下してくることがよくある。

 そこでホンソメワケベラがデンタルクリニックを営業していることを、彼らは知っているのだ。

 なのでホンソメエリアに降下してくると、みんながみんな

 「ケアして、ケアして!」

 というポーズをとる。

 こういう根ではペアでいることが多いホンソメワケベラは、文字どおり降って湧いた大繁盛に大わらわになりながら、一生懸命リクエストに応え続ける。

 ただし、ハタやウツボといった魚食系の大きな魚の場合は、口を大きく開けてくれるからホンソメワケベラも楽々クリーニングができるのだけれど、プランクトン食のグルクンたちが相手となると、そういうわけにはいかない。

 かといってグルクンたちは、みんな口内ケアをリクエストしてくる。

 そのためホンソメワケベラたちは、まるで通気口を通路代わりにして這い進むジョン・マクレーンのように、狭いところに入っていくしかない。

 閉所恐怖症ならとてもできない荒業だ。

 にもかかわらずホンソメたちは、クライアントさんがグルクンたちなら、必ずと言っていいほどこのダイ・ハードクリーニングをこなしている。

 グルクンたちの口径がたまたま程よくピッタリだからなのか、他の魚ではあまり目にすることがない。

 ひょっとするとグルクン専用に特化したケアテクニックかもしれず、だからこそ彼らグルクンは、その秘儀を求め、群れから離れてわざわざ海底付近まで降下してくるのだろう。