水納島の魚たち

ツノハタタテダイ

全長 15cm

 いつも岩陰にすぐ逃げこめるあたりで、二人仲良くジッとしているツノハタタテダイ。

 ムレハタタテダイの仲間はどこか陽気でパッと晴れやかなものなのに、彼らツノハタタテダイは人知れずひっそりとシアワセを味わっているかのような風情がある。

 ひとことでいうと地味。

 ところで、このツノハタタテダイの「ツノ」というのは、もちちろんこの部分のことなんだけど、

 ただでさえ黒っぽい色彩のうえに岩陰にいることが多いものだから、海中でこの「ツノ」に気づく方は少ない。

 でも老成魚だからかこのツノの部分が白っぽく剥げているモノがいて、それを正面から観ると…

 なんだかキリリとした眉毛に見えて、昭和の男前顔に変身だ。

 そんな地味なツノハタタテダイも、幼魚の頃となると話は別だ。

 幼魚の頃はその名の由来である「ツノ」が無いかわりに、背びれが誇らしげに天に向かって伸びている。 

 スターウォーズあたりに出てくるエレガントなスペースクラフトにも似たそのフォルム。

 成魚の地味さを知っていると、いったい貴女は誰?って尋ねたくなるくらいに美しくかっこいい。

 成魚にカメラを向ける気にはならないという方も、この幼魚なら話は別かも?

 とはいえこのチビチビの写真はポジフィルムで、デジイチを使うようになってから10年あまり、ただの1枚も撮るチャンスに恵まれていない

 ひょっとするとその間、ゲストを案内中に出会っていたかもしれないものの、その記憶はまったくない。

 やはり幼魚は、なにげにレアなのかも。

 追記(2019年12月)

 そんなツノハタタテダイチビに、今年(2019年)久しぶりに出会った。

 尻ビレにある眼状斑の崩れ方からすると、先に紹介したチビよりもやや成長しているサイズかもしれないけれど、それにしたってやっぱりカワイイ。

 いやあ、カメラを持って潜っているときで良かった。

 …と喜んでいたところ、その翌日、異なるポイントで再びツノハタタテチビターレに会えた。

 尻ビレの眼状斑は名残り程度、背ビレも随分短くなってはいるけれど、それでもオトナに比べればよっぽどスターウォーズ。

 それにしても、ごくごくフツーの場所にいる幼魚、オトナの数の多さからすれば、なんでこんなに会えないんだろう…と不思議でしょうがなかったのだけど、サイズに違いがあるとはいえ2日続けて会えたってことは、実はチビターレ、なにげにフツーにいるんだろうか……。

 でまた次回会うまでに10年かかったりして。 

 追記(2020年11月)

 今年(2020年)も会えました♪

 この写真を撮った7月末には随分成長していたけど、見つけた頃はまだ眼状斑もクッキリで可愛かった(半月以上同じ場所に居続けてくれた)。

 ツノハタタテダイチビターレ、やっぱフツーにいるのか??

 追記(2023年1月)

 昨秋(2022年)にもツノハタタテダイチビターレがリーフ際にいた。

 10月のことなので、もう少し早く会えていればもっと小さい姿を拝めたことだろう。

 ともかくもそういうわけでツノハタタテダイチビターレ、やたらとたくさんいるわけではないにしろ、フツーにいるのは間違いなさそうだ。