3・困ったときの真田さん

 テストも兼ねて、急遽取り揃えたアイテムを使って、とんぼ玉の商品撮影もしてみた。
 これまではかなり簡易に、内蔵ストロボでパシャッと撮っていたから、どうしても玉の正面に反射が写ってしまっていた。

 ところがカメラから離れた場所から撮ってみると、あ〜ら不思議、まったく違った雰囲気になる。<不思議じゃないですって。

 ほぉ、なるほど、便利なものだぁ……などと満足しつつ、これで大丈夫!と安心した直後のことだった。

 いつもの調子で後片付けしていたら、

 ガラガラガッシャンッ!!

 カメラとストロボがシンクロコードで繋がっていることを忘れていて、いつものようにカメラだけ持ってしまったのだ。
 コードに引きずられたストロボが、床に落下。

 ああ、なんてことだ!!

 ……でもまぁ、落っこちたくらいじゃ壊れないよね♪

 が。
 それは耐圧使用の水中ストロボの話だった。
 繊細な陸上のストロボは、1度の衝撃でついに還らぬヒトになってしまったのである。

 え゛―ッ!?こんな大事なときに!!

 一縷の望みを託して分解してみたものの、中身を見たからといって何がどうなんてことがわかるはずもなし、単にトドメを刺しただけで終わってしまった。

 石垣出発まであと一週間。
 通販でもギリギリ間に合うか?
 それとも、名護のキタムラの限られた種類の中から選んで買うか?

 うーんうーん……

 とうなっていたら、さらなる異変が!!

 商品撮影用のD−80が、このところちょっと不調になっていた。
 シャッターを切ろうとすると、たまにErr表示が出るのだ。

 それでも、一度シャッターボタンを押してしまえばそのあとは普通に撮れるので、とりあえず気にしないでいた。

 その頻度が増してきたのである。

 取説の「故障かな?と思ったら」を読んでみると、その表示が頻出するようになったらニコン修理サービスセンターへ、などと書いてある。

 うーむ。
 10回に2、3回くらいの割ってのは、頻出なんだろうか。

 ………頻出だよなぁ、フツー。

 今回の撮影行には、水中用と陸撮用と、それぞれ1台ずつD−80を持っていく予定にしていた。
 そのうちの陸撮用が不調!!

 10回に2回くらいだったらなんとか使えるにしても、それがだんだん10回に3回、4回、5回………はては10回全部なんてことになってしまったら非常に困る。
 これまでの経験上、えてして大事なときに使えなくなるものだ。

 うーむ。
 ストロボを新たに買おうかと思っていたものの、ここはカメラを用意しておいたほうがいいかも。
 しかし、出発まであと一週間というタイミングで、カメラを用意することなどできるのか?

 「ひとつだけ方法がある!」

 さ……真田さん!!

 名護のキタムラでこのひと月ほど目をつけていた中古のD−80があったのだった。
 そういうときに限って売れてしまっている……なんてことがありそうだと思いつつも、さっそく行ってみるとまだあった。

 中古だといきなり壊れてしまうかも…という危惧がないでもなかったけれど、そこは全国区のキタムラ。いくらなんでも使用ひと月以内で壊れたりすることはないだろう。

 カメラのピンチは解決。
 では、ストロボはどうする?
 すでに手元には満足に機能する陸上用ストロボがない。それでどうやって「左斜め上奥」から発光させる??

 「ひとつだけ方法がある!」

 さ……真田さん!!!

 水没してしまったために、マニュアルのフル発光以外で同調できなくなってしまったINONの水中ストロボが1台あったのだった。

 あのスレーブ発光機能を使えば、コードレスで離れた場所からの撮影が可能だ!!

 スレーブ発光させるには、本体の内臓ストロボを発光させなきゃならない。
 しかし本体のストロボを被写体に当てるわけにはいかないから、光るけれども被写体には当たらない、そんな装置が必要だ。

 そんな都合のいい装置、作れるんですか??

 「ひとつだけ方法がある!」

 もういいって。

 真田さんが教えてくれた、内臓ストロボスレーブ発光装置がこれ!!

 空間磁力メッキ!!

 ……じゃなくて、アルミホイル。
 これ以上安価に揃える方法を僕は他に知らない。

 一目見て、こんなものホントに使えるのかよ……とバカにしたあなた、これがホントに使えるのでございますよ。

 ただし、意外な弱点があったけど。

 そんなこんなで、真田さんのおかげでなんとか必要機材を揃え、準備万端整った我々は、ついに出発当日を迎え、一路那覇空港を目指したのだった。