E駒形どぜう(3月6日)

 この日最大の目的地とは、ここだ!!

 ご存知、駒形どぜう!!
 どぜうと書いてどじょうと読む。
 旧仮名遣いでもどぜうとは書かないのだけれど、どぢゃうと書いた暖簾を出していたら大火事に遭ってしまったため、験が悪いということで「どぜう」と書いて今に至っているという。
 今回の上京&都内滞在に際し、どうしても行きたかったところが二箇所あって、その一つは昨日クリアした深川めし。
 もう一つがここ、「駒形どぜう」だ。

 深川めしは初体験だった僕たちだが、ここ駒形どぜうにはかつて来たことがあった。というのも、先に触れたこの近くにお住まいの著者が、僕が昼食時に訪れたこともあって一度ここに連れてきてくださったことがあり、その雰囲気と美味さに感動した僕は、後日うちの奥さんを連れてきたこともある。

 なので、いわば懐かしの味。この機会を逃す手はない。
 が!!
 今朝、まさにこの日朝のテレビのニュースで……

 「中国産のドジョウから、基準を上回る農薬が検出され、回収を通達しているとのことです」

 なんてこった!!
 食品関係の不祥事や事件には事欠かない昨今だけれど、テレビでドジョウの話題なんて年に何度あるというのだろう?それもよりによって我々が行こうとしているその日に!!

 はたして、駒形どぜうのドジョウはどこ産のものなのだろうか。
 ドジョウを売りにしている以上、もし中国産を扱っているのだとしたら、この日店を開けることすら難しいのではなかろうか。
 はたして駒形どぜうはこの日オープンしているのか??

 開いてた!!

 それもそのはず、ここ駒形どぜうのドジョウたちは、大分県や福島県といった、水が豊富で自然に恵まれた土地で養殖されているものなのだ。
 あとで知ることになる福島のあの水量豊富な雪解け水が、きっとドジョウの養殖にも役立っているのだろう。まさかこんなところで会津とご縁があったとは。

 いずれにしても、さすが創業200年の歴史を誇る老舗、中国産どじょうの不祥事などまったく関係なかった。

 一抹の不安が解消され、意気揚々と入った店内は、まだ正午前だったので空いていた。
 鬼平犯科帳に出てきそうな雰囲気を醸しだす座敷は、「暖簾をくぐれば江戸の香り」という店の謳い文句がウソではないことがわかる。

 そこで我々は、柳川鍋とどじょう鍋をそれぞれ定食で頼みつつ、迷わずビール。
 すると、定食についている田楽が出てきた。

 木の芽がお洒落で、かつ美味しく、これがまたビールに合う。
 お通し状態だ。
 そしてさあお待ちかね、これが柳川!!

 そして、こちらがどじょう鍋!!

 柳川はみなさんご存知のとおりのゴボウを添えた卵とじ。
 それはそれで素晴らしく、またこのどじょう鍋もそれに輪をかけてステキ。
 自家製のタレでこの山盛りのどじょうを煮るんだけれど、傍らにトッピング用の長ネギが山盛りで置いてあるので、それを好きなだけ投入できるようになっている。

 ああ、今思い出してもヨダレが……………。

 ビールが空いて、シメのご飯を頼むと一緒に出てくるのがどじょう汁。

 ご飯は上品にもお櫃と茶碗と別々に出てくる。一人前のお櫃なんて、丼と変わらない。そしてこのどじょう汁が、これまたバカをより一層バカにしてくれるので、余裕の3杯飯状態になるから、茶碗を使うことなくそのままペロッと平らげてしまった。

 いやあ、極楽極楽。

 中庭がまた味があることも手伝い、なにやら外の雨までシアワセに満ちているようにさえ見える。枝に止まったヒヨドリの姿に、ここが東京のど真ん中であることをしばし忘れる我々なのだった。

 あー、心地いい。
 今宵の目的は見事に達成された。
 このあとはもう、夜までホテルでのんびりゆっくりしていたい。

 が。
 宴はこれからなのだ………。