1・プロローグ

 銀座。
 明治の文明開化以来、日本を代表する街であり続けてきた銀座である。

 田舎者の我々にとって、煌びやかすぎるほどに輝く存在の街でもある。

 日本各地に名所旧跡数あれど、この銀座ほど我々にとって似つかわしくない場所はない……といっても過言ではない。

 であればこそ、このまま島で暮らしていれば一生縁は無かったであろう。

 ところが今回、ひょんなことから銀座に滞在できるきっかけを得てしまった。

 最近まで知らなかったけど、銀座といえばすぐ近くに築地がある。その先には月島がある。
 そしてそれらは、フツーに歩き回れる距離にある。

 日本が世界に誇る街、そして最大の市場、プラス下町とくれば、そこにあるのはもちろん……

 味な店。

 銀座行のきっかけでもある「ひょんなこと」こそが今回のメインイベントである。しかし一生縁がないだろうと思っていた銀座にせっかく滞在できるとなれば、もちろん……

 「酒場」という聖地へ、酒を求め、肴を求め彷徨う。

 そう、今回は吉田類の酒場放浪記ならぬ「クロワッサンの銀座彷徨記」なのだった。

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 そのメインイベントは11月30日に予定されている。
 そこで我々は、前日29日に島を出て、その日のうちに上京する予定を立てていた。

 その大事な出発の日に、あわや連絡船欠航のため飛行機に乗れず!!なんて事態になりかけたところ、なんとかギリギリセーフで無事島を出発(離島に住んでいると、ただ島を出るだけでひとつのエピソードになってしまう…)。

 一路南下し、那覇空港着。
 日のあるうちに現地に到着したい場合、たいてい那覇空港出発はお昼前後になる。
 今回はやや余裕を見てお昼過ぎの便にしていたから、空港到着後から搭乗開始まで時間はたっぷりだ。

 なのでもちろん……

 このところ恒例の、キリンビアレストランで旅の始まりに乾杯。

 1000円を切るランチメニューも最近充実してきて、あろうことか修学旅行生がジュース片手にランチを食べに来るなんてことにもなっている(そういう客も取り込まないと、経営的には苦しいのだろう)。

 けれど我々は、いつものようにソーセージ3種盛り合わせと、昨年から登場したナポリサラミなる名前の美味しいサラミソーセージを、コク豊かな一番搾りスタウトで流し込む(このへん、酒場放浪記風に)。

 ちなみにこの写真はすでに2杯目だ。
 キリン直営店だけあって、これまで我々が県内でいただいた生ビールの中の最高峰を今もなお維持し続けているこのお店なので(こだわりの2度注ぎ方法、いつまでも消えないクリーミーな泡が素晴らしい)、昼前からビールも当然の流れなのである。

 が。
 今夕さっそく飲む予定にしている我々が、ここでたらふく飲んでしまっていていいのだろうか。

 ……という疑問もまた、毎度恒例なのだった。

 定刻より30分以上遅れて、ついに全日空996便は飛び立った。
 目指すは東京、銀座の街。
 あれに見えるはブルガリか、はたまたカルティエ、ティファニーか。

 ……そのどれとも無縁なんですけどね。

 <ところで、メインイベントっていったい何なんです??

 それはもちろん…………ヒミツです♪

 ……って、すでに大方の人がご存知の今、ここまで引っ張ってどうすんのよって話だけれど、構成上こうしたほうがよさげなので、読者におかれてはたとえすでにご存知でも、

 「何何??メインイベントって何!?」

 というスタンスでいなければならないのであった。