5・伊平屋周遊半日コース!

 伊平屋島。
 いつも霞のむこうに見えているこの島は、ご存知のとおり伊是名島のそばにある。
 伊是名島よりもさらに北方にあり、緯度でいうなら島の北端は鹿児島県の与論島よりも北になる。
 沖縄県最北の有人離島なのだ。

 伊是名伊平屋両島ともその昔は那覇から船が出ていたらしい。
 その昔がどれくらい昔なのかは知らない。
 もともと尚氏発祥の地として首里王家にゆかりの島だから、那覇との行き来が盛んだったのだろうか。
 沖縄本島は3郡に分かれていて、北から国頭郡、中頭郡、そして島尻郡と続く。本来であれば国頭郡であるべきところ、やはりその由緒正しいお土地柄だからか、行政区分を決めた当時船が那覇から出ていたからか、こんなに北にあるのに伊平屋島の行政区分は島尻郡になる。

 現在では、那覇―伊是名を結ぶ軽飛行機の便があるものの、伊平屋には空港は無く、伊是名経由で来ないかぎり、運天港から出ているフェリーが唯一の交通手段だ。
 那覇からだと、この運天港までが遠い。
 そして、運天港から1時間20分もかかる。
 そうなるとやはりなかなか観光客は訪れない。

 観光客が訪れないと、経済的には潤わない。
 そのかわり、島の中が観光観光していない「かつての沖縄」がまだ残される。
 現地の人たちにとっては不本意なのかもしれないが、沖縄を旅する人々にとっては、ずっとそのままでいてほしいと思う島々のひとつであるに違いない。

 さて、そんな伊平屋・伊是名のうち、我々が今いるのは伊平屋島である。
 伊是名が丸っこい形をしているのに対し、伊平屋は南北に細長い。そしてその南端は、橋で野甫島と繋がっている。

 そんな島を、半日かけて車でグルリと回ってしまおう!

 この日我々が利用する予定だったのは、伊平屋レンタカーという店であるということはすでに述べた。
 前述のとおり、ターミナルから歩いて30秒ほどのところに、とってつけたようなプレハブの事務所があった。
 宿によっては低料金で車を貸してくれるところがあるという話を聞いていたけれど、その料金とここのレンタカー屋さんの料金とほとんど変わらない。
 ワゴン車を24時間借りて6000円。
 もちろん、一泊程度だったら自分の車をフェリーに載せるよりも圧倒的に安くなる。

 昼食を済ませたあと、そのレンタカー屋さんを再訪した。
 もう生ビールを飲んでしまった僕は当然ながら運転しない。ここから先のドライバーは、生をグッとこらえたオチアイ。

 予約せずいきなり来てもたいてい大丈夫らしいけど、1日前くらいに予約してくれたほうが確実、というので、僕はワゴン車を予約しておいた。
 現場でやっぱり普通乗用車に変えますというのもありだというから、とりあえずは大きいのを、と思ったわけである。
 とはいえワゴン車にもいろいろある。
 はたしてこういう離島のレンタカー屋さん、ワゴン車っていったいどんな車なのだろう?

 事務所の御婦人に問うと、

 「11−46と4−37のどちらでもいいですよ」

 外に何台か停まっている車のナンバーで説明してくれた(ナンバーはさすがに覚えていないのでここでは仮)。

 フムフム…11−46と4−37ね。
 ナンバーを頼りに外に出てみた。
 ん??
 ひとつは思いっきり業務用のでっかいハイエース、そしてもう一台は一般者のラルゴ。
 おねーさん、この二つの選択肢って普通ありえるのですか??
 どう考えたってラルゴじゃないか!!

 というわけでラルゴを選び、ついに我々はターミナル付近を後にした。

 いやあ、それにしてもでかい車って乗り心地がいいなぁ。
 うちのスーパーリムジンとは大違いだ。
 なにしろ3列も座席があるから、運転席にオチアイ、助手席にうちの奥さん、中列にキッズ、そして後列で僕は酔っ払った心地よさとともにドデンと横になれるのである。
 こういう車なら、たとえ車内で避難生活を送ってもエコノミー症候群にはならないだろうなぁ。
 次はこういう車を買おう。<次っていったいいつ??

 最初に宿に寄ってチェックインを済ませて荷物を置いてもよかったけれど、なにしろ車がでかい。荷物はいくらでも置けるのだ。
 それにまだチェックインの時間には早かったから、このまま観光してしまおう。

 観光ってどこに?
 日本国内旅行ではサザエさんのオープニング制覇を目論んでいる我々である。目指すはもちろん伊平屋の名所だ。<このあたり、キッズの意向はまったく無視している。

 山すそがすぐ海まで迫る伊平屋島は、平地が少ない。
 その少ない平地で昔から水田耕作を行っていたそうで、今でも伊平屋には随所に水田がある。
 ああ、穂を実らせている稲がある!!
 金色の田んぼを見るのなんていったい何年ぶりだろう………。
 ……と、最初はかなり新鮮だった景色も、それがずっと続くとさすがに飽きる。この先目的地までどれくらいかかるのだろう??

 ……と思う間もなく到着した。南北に長いとはいえ、感覚で想像していたよりも伊平屋は小さいらしい。
 到着したのは、最初の目的地・念頭平松だ(地図上の8番)。
 こういった名所旧跡に関しては、ネットで調べれば詳しく書かれてあるだろうからそちらを参照されたい。
 ま、早い話がハワイのこの木何の木気になる木、もしくは久米島の五枝の松のようなものと思えばいい。
 だだっ広い広場に、気分よく裾を広げる立派な松。
 うん、たしかに心地よい。
 ハイ、カシャッ。

 でも、松を眺めるだけで我々が終わるはずはなかった。
 なんだかさっきの生ビールですっかり心地よくなっている僕は、ここで寝転がりたくなってしまったのだ。

 すると、その隙を微塵も逃さず、リョウ君のジャイアントボディプレス!!
 おまけにオチアイの波状攻撃!!


撮影:ナァナ

 このツープラトンの攻撃により、僕の酔いはさらに心地よいものへと昇華した……。