18・さだおばぁ

 この日の昼食も、ふくみみ・おーほりは考えてくれていたらしい。いわく、南部のほうに驚異的なナポリタンなどを食べさせる昔ながらの食堂があるのだとか。

 このところ漁港食堂とか昔ながらの食堂などに興味を持っている我々には、格好の場所ではあった。
 が。
 すでに我々には心に決めた行き先が。

 いうまでもなく、新垣食堂!!

 昨年の石垣島で立ち寄らせてもらった、牛肉メニューオンリーの魅惑のお店をみなさんはご記憶だろうか。

 我々は今回もう一度そこを訪ね、前回実現できなかったある願いをかなえたかったのだ。

 というわけで、いったんふくみみ邸に戻ってからビチョビチョの服を着替えさせてもらったあと、モッコシモックンモトヤをともなったノリダーともども、魅惑のランチへと赴いた。

 あ、そうそう、モッコシモックンといえば!!
 昨年はただの肉の塊でしかなかった彼が、たった一年経っただけで、あっちゃこっちゃ歩き回っている!!
 しかも、カメラのオートフォーカスが追いつかないくらいに速い!

 この分では、次回会うときには100mを9秒台で走れるようになっているに違いない………。

 で、新垣食堂に到着〜〜〜!!

 その入り口にあった幟に、昨年から今日まで続いていた我々の疑問の答えが書いてあった。

 「当店牧場産石垣牛」

 やっぱそうだよなぁ、あの量でこの安さ、自分のところの肉じゃないとあり得ないものなぁ。
 石垣市内の食堂やレストランには、那覇の「アグー」と同じくらい「石垣牛」と書かれた幟がはためいているけれど、「当店牧場産」ってのはなかなかお目にはかかれないに違いない。

 ここで我々が頼むのはもちろん、

 牛そば。
 見よ、この牛肉の量!
 せっかくだからと、無謀にも大にチャレンジしてしまった。小といってもほとんど大。つまり大は特大なのである。
 小で500円、大で700円。

 これでもう文句などなにもない。でも昨年の我々は、ここでただ一つだけ、ただ一つだけ残念なことがあった。

 なんと、店のメニューにビールがないのだ!

 当然のようにビールをお願いしたら、「ないです」という、夢も希望も断たれる応えが返ってきたのが昨年のこと。
 だってあなた、このほかに牛汁も備えているこのメニューで、ビールがないってありえないでしょう?

 だから我々は………………ビール持ち込んじゃおうか??作戦を企図していたのだった。
 市街地ならいざ知らず、こういうところなら大丈夫なんじゃない??ダメならダメでまぁしょうがないか、という軽いノリだったのだけど……。
 さすがふくみみ夫妻!!というか、持つべきものは良き後輩!

 お店の方々と顔見知りの彼らは、あっという間に話を通してくれたのだ。
 で、OKなら買ってから来ようと思っていたのに、ビールまで用意してくれていて!!

 しかもモルツッ!!

 美味いッす!!

 ああ、これでもう…思い残すことはない。


そのほか、ふくみみ・おーほりは牛汁、そして西城秀樹も真っ青の食べっぷりで
ノリダーが食べているのは、牛肉たっぷりのカレー。

 …と、こんな具合にテーブルにビールを置いてたんだけど。
 事情を知らない他のテーブルにいた人たちは、きっと(なんであそこにだけビールが??)と思ってたんだろうなぁ……。
 みんなレンタカーの人たちでよかった。

 胃も心も満ち満ちた昼食後、とても魅惑的な商店に案内してもらった。
 みなさんはペンギン食堂製「石垣島のラー油」という人気商品をご存知だろうか。
 銀座わしたショップでも入荷と同時に売りきれるというほどの売れ筋商品だ。

 そのラー油の生みの親というおばぁの店。
 名をさだおばぁという。
 お店でもその元祖ラー油を売っているそうで、そのほか信じられないくらいに大きなキクラゲも名物なのだとか。
 このキクラゲ、マジででかい。
 水で戻すと…………(左手で持っているのが乾燥状態)

 現在もさだおばぁが採集しているそうなんだけど、その場所は一子相伝の超企業秘密であるらしい。

 でまたラー油が美味いのなんの。


…うしろの伊佐美はこの稿とは関係がない。

 酒にもご飯にもバッチシ!
 元祖の冠に偽りはない。

 しかし、キクラゲもラー油もさることながら、ふくみみ夫妻の話を聞いて我々がこのお店で最も会いたかったのは、ほかならぬさだおばぁだ。、
 が、あいにくレジには若いオネーサン(石垣マラソンに出るために里帰り中の娘さんらしい)の姿しかなかった。
 キクラゲでも取りに行っているのかなぁ……と残念がっていたそのとき。

 いきなり横手からヌーッと現れ、何も言わずにスッと差し出された右手。ふりかえると、ニヤリと笑うおばぁの手にはうっちん茶が。

 うっちん茶には特に意味はないようで、そのとき店にいた客全員に、おばぁがコーヒーやらお茶やら、手当たり次第に飲み物を配っていたのである。

 おぉ……さだおばぁ!!


撮影:ふくみみ・ノリダー

 ある意味、石垣島のどんな珍しい生き物に会うよりもうれしいかもしれない………。

 石垣島北部へお越しの際は、ウルトラの母ならぬラー油の母、さだおばぁのお店に是非お立ち寄りください!
 …といいつつ、場所がよくわかってない我々なので、検索してみてね。

 このあとは!
 いよいよ廃村ツアーの始まりだ。