19・ふくみみエコツアー・廃村物語

 廃村ツアー。

 といっても、いったいそれはどこにあるのか、どのようにあるのか、どのように見て周るのか、などという予備知識がない我々はまったくの白紙状態だったので、ただただふくみみ・おーほりに身を任せていた。

 で、たどり着いたところは……。

 昨年山の上から楽しませてもらった景色はこれ。


昨年の旅日記より

 その真っ只中なのだった。
 道の周囲は牛の放牧場!! 

 牛に囲まれた未舗装の道を、4駆でもなんでもない車で、底をこすりつけながらゆっくり進む。
 この道、一応市道なんだそうな。

 それにしてもこの風景!

 海をバックに牛が放牧されている絵なんて、僕は県内で他に観た覚えがない。
 こんなミネラルたっぷりの牧草を食べながら野山を歩いている牛は、さぞかし美味しいだろうなぁ……。
 牛の様子もさることながら、全面的に広がるこの広大な風景、市街地とは逆の意味で、とても石垣島にいるとは思えない。

 さらに進むと、ゲートがあった。
 そこで車を降りる。
 ここからいよいよツアー開始なのだ。

 エコツアーというものがどこもそうなのかどうかは知らないけど、ふくみみツアーでは、ただガイドに盲目的についていくだけではなくて、そのフィールドごとにいろいろとチェック項目が設けられていて、様々なことがらを自分で考えながら散策していく、というものだった。

 我々もそれに則って、要チェックポイント、すなわちキチンと考えなければならないことをふまえつつ、テクテク歩く。
 いったい何を考えながらかというと、

 たとえば、廃村廃村というけれど、いったいなんで廃村になったのでしょうか。

 たとえば、森に覆われた感のある廃村ながら、その入り口の手がかりとなるものがあります。それはなんでしょう?

 そしてさらにたとえば、さてこれはなんでしょう?

 すでにこれは廃村の中で、れっきとした人工物である。その正体は……

 …ふくみみエコツアーに参加してください(笑)。

 理にかなった目印を頼りに進入していくと、ただの森かと思われたところに、あきらかに家の跡とわかる遺構が点在していた。

 

 

 この家は、歴史に名が残っている本土の人物が宿泊したことがあるそうで、ちゃんと記録にも残されているそうだ。

 誰も知らない間に存在し、誰も知らない間に朽ち果てた村ではなかったのだ。

 集落跡のすぐそばには自然の海岸が広がっている。
 そしてその海岸を見渡すと……

 イノーに点在する数々の岩。
 この村は、石垣島の島外から、当時の首里王朝の政策に基づいて移住してきた方々が切り拓いた村なのだそうで、一時は完全に集落として完成され、それなりの賑わいも見せていたらしい。
 それがなぜ廃村に追い込まれたのか。

 点在する岩たちが、その理由を無言で語りかけてくれる。

 この海岸をさらに歩くと、こういう場所もあった。

 石垣市の市指定有形文化財に指定されている、この村の御嶽だ。
 つい最近まで、この村出身の最後の一人がご存命で、毎年必ず市をあげてここでウートートーをしていたのだとか。
 その子孫はたとえお元気だとしても、今やこの場所の神様とお話できる人はいなくなってしまったのである。

 その後、おあつらえ向きの岩をテーブルにして、海辺で風に吹かれつつ、ノリダー特製の美味しい美味しいお菓子を食べながらのお茶タイム。

 このお茶タイムで…。
 ふくみみ・おーほりが、廃村になった理由よりも衝撃的な事実を明かした。
 今明かされる、衝撃の事実とは!?

 「昔のノリダーの料理はひどかったんですよぉ」

 「どうやったらこういう風にできるんだろうってくらい」

 「お、今日は美味しいなぁ…と思ったら、クックドゥーでした……」

 え゛――――――――――――ッ!! 

 そ、そんな、石垣最後の晩餐を彼女にすべて託している我々は、このあといったい????

 「いや、今はもうとっても上手になってますよぉ」

 それははたして、とってつけた旦那としてのフォローなのか、それとも真実なのか。
 でもまぁ、お菓子をこんなに上手に作れるのだもの、心配はないよね……………って、このときすでに台所で一生懸命準備してくれていたに違いないのに、なんという失礼なことを言っていたのだろうか。

 さて、お茶タイムのあとは、沢登りをした。
 このために、ここでもレンタル長靴@ふくみみ。
 しかも!!
 ノリダーがうちの奥さん用に特別に用意してくれた長靴を履いて。

 おお、なんというハイセンスな長靴………。
 こういう長靴を履いて、嬉々として野山を歩ける人といえば、うちの奥さんかノリダーかというところだろう。

 とにかく、あまりのセンスの良さにグウの音も出ないでいるところへ、さらにオドロキの事実が。
 なんとこれ、

 イギリス製だったのだ!!
 この日夜、ふくみみ邸にてたまたま見せてもらっていた小学館の子供用ビジュアル図鑑の巻末だったか巻頭に、しっかり載っていたのである。
 長靴の持ち主ですら知らなかった新事実!!

 それにしても。
 雨の日が待ち遠しくなるような……って。
 どうせなら、一足踏むごとに「ゲロゲロ、ゲロゲロ」って長靴が鳴いたら面白いのに。<誰も履かない。

 この無敵の長靴を履いて、沢登り!

 途中、アカギに押しつぶされそうになったり(ウソ)、

 水納島でもお馴染みの、リュウキュウアサギマダラの塊を見たり、

 この廃村で暮らしていた方々のお墓をお参りしたり、

 見たこともない美しいカメムシを見たりして、

 廃村ツアーは幕を閉じた。

 けっしてカヌーでマングローブを周るときのような、レジャーオンリーの軽い気持ちで探訪するわけにはいかない場所とはいえ、それはそれで、ふくみみが1年1年積み重ねてきた経験と知識を味わえ、エコツアーの懐の深さを知ることができた散策だった。
 積み重ねるというのは、かくも素晴らしいことなのだ。
 1年1年を、ただ横に並べてきただけのクロワッサンとは大違いなのである………。

 ホントはここで教えてもらった村にまつわる話にもう少し触れたいところなのだけれど、ネタバレになってしまったらつまらないので、言いたがり、話したがりの僕にしては珍しく、核心部分は伏せておく。
 詳しくお知りになりたい方は、是非ふくみみのエコツアーへ♪

 そしていよいよ、最後の晩餐!!