Aフンドシ男に天罰下る

 前回の東北旅行は、うちの奥さんのお母さん、すなわち義母の13回忌のついでだったため、一度埼玉に滞在してから東北新幹線で北上した。

 今回はまず仙台へ。
 なので、那覇からの直行便で行くことにした。
 とはいえ仙台までの直行便は、ANAが午後に運航している1便のみ。仙台空港到着は午後5時頃だ。
 そこから市内まで、電車で30分弱ほど。

 そしてその晩午後7時半から、今宵の宴席第1弾が待っている。
 我々が宿泊するビジネスホテルに仙台チームのTさん夫妻が迎えに来てくださるとのことだったので、ホテル着後チャッチャとシャワーを浴びて、ソッコーで臨戦態勢にならねばならない。

 わりとタイトなスケジュール。

 ここはひとつ、夜の宴席に備えるためにも、日中はおとなしく…………

 …といいつつ、なまじ那覇空港に着いてから時間がたっぷりあったものだから、結局例の如く例の店で美味しい美味しいキリンの黒い生ビールを、数々の肴と一緒に楽しんでしまった。

 ま、飛行機は2時間半も飛んでいることだし、その間ぐっすり寝ていればいいや。

 てな具合で、当初から例によってスチャラカモード。
 しかし仙台空港へ向けて飛行機が高度を下げ始めた頃から、窓外にはひとまず居住まいを正さねばならない光景が広がっていた。

 そう、今もなお放射能のせいで立ち入りが制限されている、相馬や浪江町あたりの海岸線が眼下に広がっていたのだ。

 そういうことは路線図を見れば一目瞭然なのだろうけれど、なにぶんこのあたりの距離感が身近な世界ではないので、このように飛行機から遠望できるとは思ってもみなかった。

 もとより飛行機の中にいれば、地上の音など聴こえるはずもない。しかし斜陽に照らし出されて陰影を深める眼下の地上からは、物音の気配すらイメージできないような、なんともいえぬ静寂のオーラが放たれていた。

 テレビや新聞、ネットといった情報に接していれば、福島の原発周辺の話ももちろん入っては来る。
 けれど世に溢れる数多の「情報」では、どこからも「実感」は得られない。

 今回の旅行に際して、まず埼玉によってから北上するという案もあった。
 その場合、常磐線を使って在来線でのんびりと仙台へ……

 なんてオボロゲに考えながら時刻表を見ていたうちの奥さんは、その時刻表のページを見て愕然とした。

 本来細かい数字が羅列されていて、ひと目見るだけで眩暈がしそうになるはずの時刻表。しかし福島の海沿いの路線のページはすべて……

 空白。

 もちろんのことながら、福島の海沿いは電車が走れないのだ。

 そんな「情報」は百も承知していたことけれど、実感として身についていないものだから、こうして時刻表を見て、そこがすべて空白になっているのを目の当たりにして初めて、この地域が抱えるゲンジツに気づかされることになる。

 あれから2年経ってもなお、復興どころかまだなんの道筋も見えてこない現地の事情を思えば、避難中の方々にかけるべき言葉すら見当たらない。

 そんな重い風景を背にしつつ、飛行機は定刻どおり仙台空港に到着した。

 ここも津波に襲われたのだよなぁ……。

 しかし空港自体にはまったくその気配がなくなっていた。
 人々が負った心の傷はともかくとして、放射能さえなければ「モノ」はすぐさま復活できるということだろうか。

 羽田などと違ってヒトに優しい範囲でこじんまりとした仙台空港には、市内へと続く電車が接続している。
 その仙台空港アクセス線の仙台空港駅に、このようなものが……


ご丁寧にも日付入り。

 きっとここを利用する地元の方々の中には、こんなもの作っていったい誰が利用するというのか…などと嘆いておられる向きもあることだろう。
 すみません、こーゆーヒトがヨロコビます……。

 ホームに出ると、気温3度。
 本土、それも東北地方の冬だ。
 この季節に沖縄から来ると、気温だけで旅情が湯煙のように立ち昇る。

 沖縄に比べると1時間は早い日没を境にして、車窓の景色は急速に夜の帳を下ろし始めた。

 ものの25分ほどで、11年と2ヶ月ぶりに仙台駅に到着。
 まずはここから徒歩5分というビジネスホテルを目指す。

 で………

 あれ?
 ホテルってどこだったっけ??

 我々が仙台で滞在するのは、グリーンマークという名のビジネスホテル。駅から5分なら近いので、荷物があっても苦にはならないだろう…と高をくくっていた。
 しかし高をくくりすぎたあまり、場所を確認するのを2人とも忘れていたではないか。

 慌ててホテルに電話し、教えてもらったランドマークを目指しながらペディストリアンデッキを歩く。

 ああ、なつかしのモンゴリアンチョップ……。

 あわやいきなり路頭に迷いかけたところ、ようやくホテルに到着。さっそく部屋で旅装を解いてひとっ風呂浴び、準備万端整えてロビーに赴くと……

 そこには北のマスターの姿が。
 そして東京からお越しのアネモネフィッシュさんも。

 ただしお互い面識がないお二人だったので、同じソファーにいながらもご対面はまだなのだった。
 そこへ、我々と同じホテルに宿を取っているすかてんポチ1さんとイカママさんもロビーに降りてこられた。
 すかてんポチ1さんやイカママさんは、水納島で北のマスターと会っていらっしゃるので、旧交を温めなどしているところへ、仙台チームのTご夫妻がご到着。

 しかもTさんの奥様Tさん、略してTTさんは、着物姿!!

 普段から和装になることがままあるというTTさんの着物姿は、清艶かつ上品で、日本女性ここにあり!と世界に出品したい美しさ。<出品ってあんた……。
 しかもその帯には…

 Masae工房の帯留めが!!
 へぇ、帯留めってこういう風に使うんだぁ……。<売り物だろ??

 このあたりから、すっかり僕は舞い上がりモードになる。
 そもそも根がお調子モンなので、ヒトが大勢集まるとテンション高めになる傾向がある。
 そこへもってきて、シーズンオフという、決まったヒト以外の方とほとんど会う機会がない生活を数ヶ月過ごしているため、たまにこうして旧知の方が揃ってしまうと、足元は地表から数センチくらい上のあたりで漂い始めてしまうのだ。

 そのため、普段であればけっして逃すはずがない、みなさんが揃ったところでの集合写真をまずはこのロビーにて……を忘れてしまった。
 上の帯留めの写真も、後刻撮ったものである。

 地に足がついていなかったものの、なにはともあれ予定どおり、各地から仙台へやってきたメンツは無事全員集合。
 あれ?
 ウロコムシ氏は??

 当初から行く気満々だったウロコムシ氏、仙台出撃計画のお触れを各方面にお達ししてくださっていて、仙台チームの方とも頻繁にやりとりして人数や予定を考えて下さっていたにもかかわらず、ここへ来て急遽、諸般の事情により…

 不参加♪<なぜ音符が??

 フンドシ男に天罰下る。
 ひょっとして彼のフンドシ…じゃなかった、Tバック姿の写真まで出てくるのか、と戦々恐々としておられたみなさん、ご安心ください、彼は今回、影も形も出てきません(爆)。

 さあ、みんな揃ったところで、一路宴席を目指しましょう!!