水納島の魚たち

ヒメゴンベ

全長 9cm

 あれ、この魚はミナミゴンベじゃないの?

 と思った方は、尾ビレをよくご覧あれ。

 このヒメゴンベは尾ビレにまで点々があるのに対し、ミナミゴンベの尾ビレには点々が無い。

 そんな微細な差異など気にとめられることなく、長らくミナミゴンベとみなされていた彼らは、90年代になってようやく日の目を見ることとなった。

 とはいえ住んでいるところや生活習慣もほとんどミナミゴンベと同じなので、まぎらわしいことこのうえない。

 ただ、イソバナに乗っかっているのは、いつもミナミゴンベである(ような気がする)。

 そのかわりヒメゴンベたちは、サンゴの枝間でよくチョロチョロしている。

 こうしてキンメモドキ観賞の特等席にいるかと思えば…

 サンゴの枝間から、ヒトスジギンポとお話していることもある。

 ある程度水深がある砂地の根で見られるヒメゴンベは、たいていこういう色をしているのに、浅くなるにつれて体の色が濃くなる傾向にある。

 砂地の根など水深20mくらいで観られるヒメゴンベは、ミナミゴンベの色にそっくり。

 一方リーフエッジやリーフ際のサンゴの間などにいるヒメゴンベは、全体的に濃い目で、赤っぽい部分が多い。

 小さい個体でも同じように差異が観られるところをみると、ミナミゴンベ同様、生息環境に合わせて変えているのだろうか。

 ということは、リーフ際やリーフエッジで観られるこのタイプを、砂地の根に写すと体色がコロリと変わるってこと?

 体の色はどうであれ、彼らもやはり好奇心が旺盛で、気がつくとすぐ傍でこちらを見ているということがよくある。

 つぶらな瞳で見つめられると、思わずカメラを向けてしまう。

 顔もたいそう可愛いけれど、このヒメゴンベやミナミゴンベ、それにサラサゴンベのオトナは、背ビレの棘の先っちょがヒゲモジャラになっているのが面白い。

 見ようによっては手袋が並んでいるよう。

 もっとも、クラシカルアイではとうてい確認不能な飾りだから、肉眼でのチャレンジはただちに諦め、背ビレにピントが合うよう写真を撮るしかない。

 ちなみに背ビレのこのヒゲモジャラは、成長するにつれて本数が増える傾向にあるので、チビにはチョロチョロと生えている程度しかない。

 チビターレを一生懸命撮っても、ヒゲモジャラは楽しめないのでご注意を。