写真・文/植田正恵

101.屋根が飛んだ日・1
月刊アクアネット2011年10月号

 前回そのオープンさに焦点を当てた沖縄の昔ながらの家は、当然ながら台風に強い造りにもなっている。

 屋根が低いこと、防風林や石垣で取り囲まれていること、などが台風銀座で生き延びるための生活の知恵だ。

 その正反対の造りになっているのが我が家である。

 私が水納島にやってきたのは20代の終わりごろ。
 借金をしてまでやる仕事ではないと思うけれど、ダイビング器材、船、家こみこみで安く譲るからどうだろう?という話が弊社前オーナーから持ちかけられたのがキッカケだ。

 器材、船はともかく、琉球大学卒業後ずっと「沖縄に戻って暮らしたい」と思いながら都内で勤めていた人間にとっては、まさに渡りに船の話でもあった。

 二つ返事で申し出を受諾。
 当面のゲンジツ問題には目を瞑り、若さだけを武器に、所沢での6畳2間の安アパート暮らしから、海まで徒歩50歩の広々としたログハウスに越してきたのである。

 最初の夏を過ごしてみて、いろいろと判明したことがあった。

 ログハウスといえば聞こえはいいけど、なにしろ前オーナーが島の人たちや学生たちの協力を得つつ、なかば趣味で作った家なので、いろいろと詰めが甘いところがある。

 1番の問題は雨漏りだ。

 当初、原因を探るべく屋上に上がった時には我が目を疑った。屋根が草原になっていたのである。

 台風対策として何年か前に屋根に載せていた土嚢が破れ、中の土が屋根に広がったところに、雑草が生い茂ってしまっていたのだ。
 そりゃ雨漏りもするわなぁ…。

 草原を薙ぎ倒し、土嚢を取り払い、屋根の補修をしたはいいけれど、元々が素人建築なので対処療法には限界があり、近年になってトタンを張り替えるまで、雨漏りがなくなることはなかった。
 今どき屋内でドリフの雨漏りコントができるのは我が家くらいだろう。

 さらには横殴りの雨の場合に丸太の壁という壁から水が染み出し、ひどいときには滝のようになってしまうという弱点があった。

 その他、隙間だらけなので様々な生き物の出入りが自由であったり(野鳥が雨宿りをすることも!!)、木造だから腐るところは腐っていたりなどなど(随所でキクイムシの大合唱!)、住めばわかる弱点が随所にあって、

 「ログハウスは高温多湿の沖縄には不向きである」

 という結論に達するのに1年とかからなかった。
 建築にかかった費用はフツーのコンクリート家屋を造れるほどだったというから、「なんで普通のコンクリートの家にしなかったんだ!」と思ったこともしばしばだ。

 それでも見た目の雰囲気は、たいていの人がうらやむくらいに素敵なのだ。
 島の集落から離れているという立地も、吹き抜けの高い天井という造りも、人が集まってわいわいやるには絶好の場所なので、晴れてさえいればという条件がつくにしろ、「居心地」という意味では限りなくゼータクなお家である。

 が、やはり構造的に、台風に持ちこたえられるとは思えなかった。
 そもそも造りからして、このログハウスは理にかなっていないのだ。

 だから大きな台風が来るたびに「これで見納め」と覚悟を決め続けて……17年。
 そう、我々夫婦が引っ越してきてから17年、竣工してから実に20年もの歳月、このお家は沖縄の厳しい気候に耐え続けてきたのである。

 今年の5月、本島地方に多大な被害をもたらした台風2号にも、我が家は持ちこたえてしまった。

 奇跡に近い。

 ひょっとして我が家って、台風には強いんじゃなかろうか?
 台風9号がやってきたのは、そう思い始めた矢先のことだった。
                         (つづく)