写真・文/植田正恵

109.おまけコミュニケーション
月刊アクアネット2012年6月号

 

 4月のはじめに、芭蕉布で有名な大宜味村喜如嘉というところで、広い水田一面に咲き誇るオクラレルカという花を観賞してきた。

 その傍らに、切花と株を売っている店があった。
 売り子さんによると、この花は湿地でなくとも地植えや鉢植えで大丈夫という。

 ならば、と大きな株を2つ、しめて600円也(安ッ!)を購入したところ、おまけで切花が2本もついてきた。
 それも本来は売り物である。
 もう二度と来ないかもしれない一見の観光客に、たった600円の買い物でこんな立派なおまけをつけていいのだろうか。

 日帰り観光客が帰った夕方の水納島では、島にお泊りの方がパーラーで生ビールを買い求めることが多い。
 その際、その日作りすぎてしまった焼きそばやから揚げやホットドックなどをアレンジした「おつまみ」が、ドドンとオマケでついてくることがある。

 そういうオマケに与るお客さんはたいていリピーターさんで、来島されるたびに毎回昼食をその店で買い求めているから、すっかり顔馴染みになっているわけだ。

 だからこそのサービスとはいえ、どう考えても飲んだ生ビールの代金と同じ、いや、それ以上の豪華なつまみになることが多い。

 また島の民宿では、宿代の精算の後にそっと、袋に詰められた野菜や果物を手渡してもらっているリピーターさんもいる。

 そんなちょっとしたサービスが迷惑だという人はいないだろう。たとえ夕食前でお腹が一杯になっちゃうという心配があっても、これから内地に帰るのに野菜は重いなぁという事情があっても、損得の話以前に気分はとっても温かで幸せになる。

 こういったオマケというのは、店員がマニュアルトークの大型スーパーやコンビニエンスストアではまずありえない。人と人とが直接触れ合う対面販売がなせるワザだ。
 対面販売の小規模小売店では、多少値段が高い場合もある。けれど実際私が買い物をするとき、お店の人に顔を覚えられて、「いつもありがとう!はい、これサービス!」と言われたら、薄利多売の安売り店では得られない喜びを感じている。
 初めての客であってもありえないほどのオマケがついてきたりしたらなおさらだ。

 オクラレルカの売店にしてもパーラーにしても、これはなにも営業的配慮でもなんでもなく、ただただ素朴に相手に喜んでもらおうという気持ちの表れであるのはいうまでもない。もちろん、足を運んでいただいたことへの感謝でもあるのだろう。

 島の民宿での精算の際に、宿のおばあから「空港までの道中にでも食べてね」とバナナとお饅頭を受け取った年配のご婦人が、

 「昔の日本のようねぇ……」

 と、懐かしげにしみじみとつぶやいておられたことがある。
 沖縄を何度も訪れる観光客の多くは、人の心の温かさに惹かれている、とよく言われるけれど、ほんの少し前の日本には、このご婦人がおっしゃるとおり全国どこにでもこのようなやりとりがあったのだ。

 世の中すっかり便利になって、家にいながらにしてありとあらゆる物を購入することができる現代社会は、そういう便利さとひきかえに、とても大切なものを少しずつ過去のものにしていったのだろう。

 日本復帰から40年が経った沖縄。
 今後もさらなる経済的な「本土並み」を追い求め続けるあまり、「大切なもの」を失うことまで本土並みにならないことを切に願う。