写真・文/植田正恵

174.野鳥との出会い

月刊アクアネット2017年11月号

 海の生き物の案内を生業にしているのに、実は鳥好きな私。
 そんな私のオフシーズンの楽しみの一つが、島にやってくる野鳥の観察だ。
 夏の間ももちろん野鳥はいるけれど、冬を前に北の寒い地方から渡ってくる鳥たちの種類が、小さな島にもかかわらず意外に多いのである。

 世の中にもやはり鳥好きの方は多く、「バードウォッチング」は、すでにひとつの趣味として確固たる地位を築いている。
 しかも昨今のネット社会では、ひとたび珍しい野鳥がどこそこに現れたともなれば、バズーガ砲のような長いレンズを備えたカメラを三脚に乗せた人たちが、あれよあれよという間にその場に集まるほどだという。
 そんな好事家の世界には、目的の鳥を見たいがため、その鳥を確実に観られる海外まで出向く人もいるそうだ。

 私が水納島でダイビングのガイドを始めてから、もうすぐ四半世紀になる。
 さすがにそれくらい潜っていると、同じ海でも場所ごと、あるいは季節ごとに観られるものに違いがあることがわかってくる。

 そうすると普段見慣れないものやそこにいるはずのないものの存在にも気づくことができる。
 ゲストの興味の対象や経験値に応じて海の中をご案内するためにも、普段からそれらを把握しておくことが、我々の仕事の大事な部分でもある。

 一方、趣味程度とはいえ、水納島の野鳥も本業同様四半世紀近く観察し続けているわけで、やはり海の中と同じく、島で通年観られる鳥や季節ごとに観られるものがわかってくる。

 以前紹介したシロチドリや、セッカ、メジロは留鳥、早春にはヤツガシラ、梅雨時にはアカショウビン、夏にはもちろんアジサシたち、そして10月にはサシバやジョウビタキたちがやってきて、この小さな水納島で長い冬を過ごすことになる。

 そうやって季節ごとの移ろいがわかってくると、イレギュラー的なレアな鳥にも気づくことができる。
 バズーカ砲装備の愛好家垂涎というところでいえば、冬にはルリビタキが羽を休めていることがあったし、シーズン中にはカツオドリがダイビングしている最中の我々のボート上に止まっていたこともある。
 そしてなんとなんと、数年前にはカササギがいきなり目の前に現れたこともあった。
 カササギなんて、ひょっとしたら…いや、まず間違いなく、人生最初で最後の出会いであろう珍鳥だ。

 珍鳥ということでは、ヤツガシラもまた好事家の視線を一身に集める鳥だ。
 ハトほどのサイズで、広げるとたいそう立派なフォルムになる冠羽がカッコイイ。
 世界的に個体数は少ないようながら、わりと広範囲に分布しているからか、ワールドワイドな人気者でもある。ネット上で情報が飛び交えば、たちまちバズーカ砲がズラリと並ぶことだろう。

 そんなヤツガシラも、水納島では毎年初春にたいてい1、2羽見ることができる。
 開けた草地で餌を啄む鳥なので、小中学校のグランドや休耕地、未舗装の農道や庭先の芝生の上などに舞い降りては、昆虫などを求め、のんびりと採餌している。
 もちろんその周りには、バズーカ砲レンズ装備のカメラマンなど
1人もいない。

 この秋もまた、サシバが島にやってきた。
 冬がすぐそこまで来ていることを教えてくれる猛禽類である。
 
 ずっと夏が続いているようでいながら、一足早く冬支度を始めている鳥たち。
 来たる冬には、どんな野鳥との出会いが待っているだろう。今からとても楽しみだ。